フランスの教育に戦慄

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【授業研究】この本(*1)は凄い。第1章の全体的な導入を読むと、ではどんなデイセルタシオン(フランスの小論文)を生徒たちは書いているのかと興味を持ちます。第2章では具体的な例を取り上げてくれます。評価基準も明確です。明確ですが、この評価をするには相当の力量を持つ大量の先生たちが必要になります。

 でもフランスでは簡単なことのようです。なぜなら大学に進学する全ての人は大学入試の際のバカロレア試験で「全員が」このディセルタシオンを書いているからです。その試験の初日は「哲学」のみ。何と4時間。(2021年から最終日に変更。4時間は変更なし)。中等教育で哲学を必須にしている国は少なくなっている中で、フランスの高校では文学系で週8時間、経済・社会系は週4時間、科学系は週3時間が当てられ、最後の年には「相当な労力が注ぎ込まれる」といいます。

 更に教えるべき内容は決められているが、教え方は教師に任されています。そもそも「書き方」は明示的には教えられていない。その理由は「ある解き方を示すとそれが〈正解〉になるから」と言います。従って生徒が書いた論文を教師が添削することによって経験的に学ばせるとのこと。それだけの力量のある教師がフランス全土に存在するということです。

 そして‥「鉛筆で書くことは禁じられており、必ずペンで清書する」。「特に試験では採点者が読みやすいようにバランスを考えて美しく清書することも重要である。原稿の見た目の美しさは、文章の調子が整っていることを反映すると言われており、目にも鮮やかなブルーインクのペンで美しく清書する訓練は小学校から行われている((*1)p-39)」。

 私は20代前半から論文指導を受け、原稿用紙に万年筆で書き続けていました。40歳くらいから出版社等に提出する原稿はデータにしましたが、元原稿は手書きをしばらく続けていました。今はその習慣がなくなりましたが、改めて手書きをしたいと思わされました。

(*1)「論理的思考」の社会的構築: フランスの思考表現スタイルと言葉の教育(渡邉 雅子著/岩波書店)」引用元も同じ。

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