講師(授業者)にも起きる学び

【授業研究】

雑誌の原稿を書きながら気が付いたことです。「オンライン授業(研修)」のやり方を工夫すると、先生(授業者・講師)にも「深い学び」が起きるということです。

 最近の私オンライン講座の方式はおおむね決まってきました。以下の手順です。

1 事前視聴用動画を作成する。
2 動画をアップして受講者に知らせる。
3 受講者には視聴後、「感想・質問」をスプレッドシートに書いてもらう。
4 当日は講義をしないで質疑応答を中心にする。
5 事後に「気づき・感想」をスプレッドシートに記入してもらう。
 この構成は「非同期学習(3)」→「同期学習(4)」→「非同期学習(5)」を行っていることになります。私はここでいう「非同期〈学習〉」「同期〈学習〉」の〈学習〉は受講者(生徒・学生)の「学習」と理解していました。つまり「同期学習・非同期学習」理論は学習者の学習の質を高めるための方法であると理解していました。

 しかしこの方法をとると、講師である私にも「非同期〈学習〉」や「同期〈学習〉」が起きていることに気が付きました。

 まず1,2も私は「何を講義するか」「どう構成するか」などを考えながらパワポの資料を作成し、説明をしながら音声を吹き込みます。当然、それを見直して(聞き直して)修正もします。この「自分の講義を聞き直して修正する」という作業は対面型授業では作れないプロセスでした。私はこの体験により、最初は自分の話し方の「遅さ」「緊張感のなさ」に愕然としました。「こんなだらだらとした講義を聴かせるわけにはいかない」と青ざめ、何回も作り直しました。最近では声の質も、説明の方法もさほどの修正もしなくて済むようになりました。これだけでも、オンライン研修会を通して私にはこれまでにない学びが起きたと言えます。

 更に。3と4の間で私に起きる「非同期学習」があります。それは受講する人が書いてくれたコメントを読み、考えてコメントを返すことです。これにより事前視聴用動画の説明不足や、受講する人たちの誤解が生じていることなどがわかります。私の期待していた理解が起きていないことがわかることもあります。時には多くの人が「知っていること」として説明しなかったことが、「知らないこと」だったのだと気づくこともあります。その場合には別に当日用のスライドを追加作成したり、コメントで丁寧に解説することもあります。このことに気が付いたので、私は最近、当日より前にスプレッドシートのコメントを読み回答を書くのが楽しみになってきました。その後、5のあとに気づき等を読むことで私に「非同期学習」が起きることは言うまでもありません。ここは対面型授業(研修会)と同じです。

 また当日のオンラインでは質疑応答を中心に行います。この「同期学習」で参加者は「質問をする・回答を聞く」ことで学びます。他者の質問を聞き、その回答を聞くことも学びになります。この過程で授業者(講師)にも学びが起きます。それは「質問を聞き理解する」「質問に受けて生じる自分の気持ちを自覚する(意識化する、受容する)」「何を回答するべきかを吟味する」「論理的に回答する」等のプロセスをたどるからです。ワンウェイ的な講義だけをやっていては得にくい「学び」だと思います。これもこの全体構造がもたらした「授業者(講師)に起きる学び」です。

 「オンライン授業(研修会)でできないことは何か」という議論があちこちで起きているようです。私は「できないことを探す」より前に、「できることを広げていくこと」が必要だと思います。今回は「同期・非同期学習」の構造を深めていくと授業者(講師)にも学びが起きることがわかりました。これは対面型では起きにくい大きな価値だと思います。しかし、オンラインで「講義だけ」をやっている人には理解しにくいことかもしれません。

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