臨機応変

【授業研究】校内研修会の中で、しばしば受ける質問がグループ席の作り方です。私はテーブル型の実験台しかない物理実験室で授業をやっていましたから、元々グループ席になっているという利点がありました。

 (余談ですが、12年前に転勤した時にこの部屋で担当する全部の授業をやれと言われた時には愕然としました。伝統的な授業をやるには実に「不都合な教室」教室でした。この教室が新しい授業を始めると逆にとても「好都合な教室」に転換しました。この話は別項で取り上げます)

 研修会で行く出てくるのは「小林さんは物理室だったからよかっただろうけど、私は普通の教室でやるから、なかなかできないんですよ」です。質問と言うより反論というべきかもしれません。ところが先日、珍しく大学でこの事態が出現しました。

 約50名の学生が受講している「ロジカルシンキング実践」では少し前から「アクションラーニング・セッション」に取り組み始めました。元々の教室は定員72名で3人掛けの机が3列×8列に並べてあります。ここに50人を収容すると荷物の置き場を入れるとほとんど空きがなくなってしまいます。偶々、定員200名の教室が空いていたのでここを使わせてもらうことができたので、「アクションラーニング・セッション」にチャレンジすことにしたのです。

 ‥ところが2回目の当日の朝になって、その日だけは元の教室でやらなくてはいけないことがわかりました。さて、困りました。考える時間は20~30分間。いつも文句や質問に答えては「工夫すればできますよ」と言っている私ですから、これを乗り越えないのは恥ずかしいと思いました。誰も見ていないことですが、やっぱりプライドが許さないのです。そこで次の方法をとりました。

1 いつもと同じですが15分くらい前に教室に入ります。(大学の休み時間は20分間)

2 黒板に次のように板書しました。

  「今日は1つのテーブルを前後で向かい合わせに使います。

   囲んで使うテーブル上にA,B,C‥のカードを置きます。

   それを囲んで前後で6人ずつ向かい合わせになってください。

   7人目がいるチームは椅子を持ってきてお誕生日席を作ってください。

   カードをおいたテーブル以外は使いません。

   バッグ等はその使わないテーブル上においてください。

   セッションで囲むテーブル上には筆記具とワークシートだけを置いてください」

 そして、いつものように「授業開始までのカウントダウン・タイマーをスクリーンに表示して学生を待ちます。

 「えー、この部屋でできるの?」「狭いよね~」と学生は口々に言うものの、本気で文句を言っているというより、私の指示内容を楽しみながら実現しようとしているように見えます。中には、「先生、2つのテーブルを付けても良いですか?」と質問が来ます。私が考えていなかった方法なのですが、そのアイデアもよいと思うので「それも良いですよ」と返事。マネするチームもいるし、そうでないチームもいます。私はこういうバラバラな動きが好きです。

 そうこうしているうちにカウントダウンタイマーはゼロに近づきます。もう座席づくりは完了しています。ワークシートも出席カードも全員がとっています。20秒くらいを残して、「じゃ、始めましょう」と宣言することができました。

 現場で色々お困りの方に、この方法のコツをまとめておきます。

1 先生が始業時刻の前に教室に入る。

2 指示内容は「読めばわかるように」示す。

3 どこにグループ席をつくるかはカードを置くか板書して明示する。

4 開始時刻まで何分かがわかるようにする。

  (タイマーが使えないときは、「あと〇分です」と優しい声で案内する)

5    先生はこの間、前に立って入ってくる生徒・学生とにこやかにあいさつする。

6 この時間は教壇か黒板の前に立っている方が良い。

  (先生がいつになく緊張している、時間を気にしている、と感じさせる)

7 「早くしろ」「もたもたするな」などと叱らない。

8 ワークシート等はセルフサービスにする。(自主性を促進する)

9 机を動かすなどの手伝い(干渉?)をしない。(自主性を促進する)

 

◎「アクティブラーニング入門3(小林昭文著/産業能率大学出版部)は

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