【授業研究】少し遠くへの出張だったので読み始めていた小説を往復の車内で読み終えました。「高校事変(松岡圭祐著/角川文庫)」「同Ⅱ」「同Ⅲ」を読み終えて、すっかりこの作家の文章に魅せられてしまいました。
今回読んだ「八月十五日に吹く風(松岡圭祐著/講談社文庫)」は上掲作とは異なり史実を基にした小説です。太平洋戦争の奇跡と言われた「キスカ島撤収作戦」の話です。この話自体は太平洋戦争史などて読んでいたので概略は知っていました。
しかし、この小説はこの「奇跡」がその後のアメリカの日本統治の方向性を大きく変えたという可能性を描いています。これはとても興味深いことです。ここに描かれた登場人物たちは戦争という状況の中でも人間性を歪めることなく、生き抜いています。
またこの作戦の指揮を執った木村昌福中将は徹底した合理主義と温和な人間性を発揮して作戦を成功させます。しばしば大本営が稚拙で非合理的な作戦を展開したことが批判されますが、その中にもこういうリーダーがいたということに感動します。
私は元々日本の軍隊、特に海軍は徹底した合理主義をとっていた組織であると理解しています。司馬遼太郎の「坂の上の雲」に描かれた日本海海戦における戦略・戦術はその象徴とも言えます。その組織が太平洋戦争のころには変質していたようです。
そんな中で海軍兵学校卒業時の成績は118名中107番だった木村昌福中将が見事な合理主義を発揮し続けてこの作戦を成功させたことに色々なことを考えさせられます。
松岡圭祐の本はすでに何冊か買い込んでいます、当分、出張中の読み物には困らないようです。
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