キャリア教育等と学校システムのダブルバインド

【授業改善の必要性10】新学習指導要領は社会が求める人材育成の方向性を反映したものです。象徴的な言い方が「指示待ち人間(指示待ち型)」です。最近の新入社員は「言われたことはできるが、言われなければ何もできない」と揶揄されるようになりました。
  つまり、社会では自分の頭で考え、判断し、動ける人材を求めているのです。これに対して、現在の学校システムで育成される人材は「黙って、じっとしていて、居眠りしない人」です。学校ではそれが「よい子」と言われるからです。
  この社会のニーズにいち早く応えようとしたのが「キャリア教育」です。社会が求める人材を育成しようと、様々なプログラムが開発されました。人間関係をつくろう、自主的に活動しよう…ということです。これは良いのですが、それと「教科科目の授業の中でのルール」が矛盾してきます。
  私が物理授業の改善に悶々としている時期に、「キャリア教育」のプロクラム開発を担当しました。「ワークシートを用いたグループワーク」を開発し、かなり成功を収めました。生徒達は1人も居眠りせずに、生き生きととりくみます。しかし、その同じ生徒が私の物理の時間には寝ているのです。
  今、振り返ってみると、こういうことです。同じ私がつくっている「授業」ですが、「キャリア教育」の時には「自主的・主体的に動こう」というメッセージを明示していたのにに対して、「物理の時間」には特に何も言わないけど(言わないから)、「暗黙のルール」=「黙ってじっとしていろ」に従わせていた、ということなのです。
  つまり「キャリア教育」が出しているメッセージと、「学校システム」が出している暗黙のメッセージは、ダブルバインドになっているのです。(この項続く)