実業系の学校の課題と解決策

【授業研究】昨日のブログの記事に以下の質問をいただきました。「実業系の生徒ほどALが大切な気がします。どのようにこのことを伝えればよいか大きな課題です。是非ご教示ください!」
 これは、現在、新しく開校する工業高校にアドバイザーとして関わっている私にとっても重要なことなので、私自身のアタマを整理するためにも書いておきたいと思います。まずは、目次です。各項の詳細については、少しずつ、断続的に述べていくことにします。

実際の授業の傾向
1 当面の知識とスキル獲得(伝授)に大半の時間が使われがち。
2 「その知識とスキルで生きていける」と思い込みやすい(思わせがち)。
3 徒弟制度的な学び方を身につけやすい(教え方が多い)。
4 資格取得に力を注ぎすぎて、丸暗記と受験テクニックに走りやすい。

上記の問題点
1 専門領域の力しかなく汎用性や柔軟性に欠ける人材育成になりがちであり、「変幻自在なキャリア形成」が困難になりやすい。
2 企業の平均寿命は短命化の一途。フィルムや白熱電球が消滅するなど特定のモノづくりのスキルも短命化の一途。特定の知識・スキルに頼って生き抜こうとすると生きづらくなる。
3 「一人の師匠に長年師事する」「忍耐が美徳」などの学び方を身につけると、主体的な学び・協働的な学びが損なわれがちになり、現代のビジネス社会が求めている人材とずれがちになる。また「言われたことを言われたとおりにやる」能力だけではいずれロボットにとって代わられる。
4 資格所得は必須事項ではあろうが、丸暗記と受験テクニックで身につけた知識とスキルは現場で活用しにくい。また、この学び方を身につけることが社会人になってからの学び方を規定しがち。

改善案
1 キャリア教育を土台に置く。それも教師の個人的経験に基づくキャリア教育や古典的なキャリア発達理論に基づくものではなく、「トランジッション理論」や「計画的偶発性理論(クランボルツ)」などに基づく現代的な理論を教師が学び、少しずつ生徒や保護者に伝達する。
2 社会学的・経営学・組織論・リーダーシップ論などは以前と大きく様変わりしている。これらを教師が学び、理解し、生徒・保護者に伝えられるようにする。
3 上記を授業に反映するためにAL型授業の導入し、実業系も含む全ての授業をAL型授業に転換する。ここで「実技系は活動しているからアクティブラーニング」の誤解を排することが重要。「主体的な学び」と「協働的な学び(対話のある授業)」を促進しているかどうかを目安にすることが不可欠。
この授業スキルを段階的に教師が学ぶとともに、「研究授業と振り返り会」「授業をお互いに見て学ぶ仕組みとスキル」「教諭を中心としたコアチーム」などを軸とした組織開発を同時に進める必要がある。
4 資格取得系の授業は「悪」ではない。資格取得型のややもすれば過去問解説になりがちな授業でも、アクティブラーニング型授業に転換すると生徒の「主体的・協働的な学び」を促進するととともに点数も飛躍的に向上することができる。これらの手法を教師が身につけることで、「当面の課題」を「短時間に」「教育の負担を軽減して」達成することが可能になる。
※この項、断続的に続けます。