授業を変えると「やりがい」が見えてくる

【授業改善の必要性13】私はそれほど高い意識で自分の授業を転換したわけではありませんでした。単に「居眠りをなくしたい」だけでした。その思いだけでプレゼンテーションを工夫してきたものの、どうにもならない行き詰まりを感じていました。そんな時に、キャリア教育のプログラム開発で利用したグループワークがヒントになりました。構成的グループエンカウンターをもとにしましたから、先生の役割は「ファシリテーター」でした。
  さらに、「アクションラーニング(質問会議)」などのスキルを組み合わせて「教師としての自分の役割」を意識化していきました。その内容は、のちに知った「反転授業(flipped classroom)」でいう「学習者に寄り添う支援者(guide on the side)」とほぼ同じことでした。更に言えば、いつのまにか、「言語活動の重視」も「思考力・判断力・表現力の育成」も実現していました。
  でも、私にとって最大の喜びは、理論や方針に合致したことより、「授業をすることが楽しくなったこと」でした。生徒たちがにこにこして授業に臨みます。もちろん、居眠りの心配などいつのまにか全くなくなりました。それ以上に、生徒たちが「物理が面白くてしかたない」「毎日、全部の時間が物理でもいいなあ」「考えることが楽しい」「先生、オレ、人間として成長している気がするよ」「今までだったらできなかったけど、今は人の話を集中して聴いたり、自分の意見を言えたりできます」等々の声をリフレクションカードに書いて、毎時間、伝えてくれるのです。
  私は教員生活20年を経て、ようやく、「物理の授業を通して生徒の成長に貢献している」と感じ始めていました。授業改善の最大の効果はこれです。私たち教師が「やりがい」を感じます。授業が楽しくなります。準備もいやではなくなります。そして、自分の仕事に誇りを持つことができました。「人をつくり、国の基礎をつくる仕事」をしていると感じられました。「AL型授業」を軸として授業改善を図ることの効果や楽しさを多くの先生たちに体験してほしいものです。それが「授業改善の必要性」だと言っても過言ではないと思っています。(この項終わり)