懐かしい訓練方法(1)

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【授業研究】「ムショぼけ(小学館文庫)」という小説が話題になっているという記事を読みました。著者は元ヤクザ。14年間のムショ暮らしから出てきたばかりの沖田臥龍竜氏。その記事の中で目に留まった一節が以下。

 沖田さんは25歳の頃、刑務所で読んだ浅田次郎さんの「鉄道員(ぽっぽや)」を読んで涙し、人の心を動かせる小説家になりたいと考えるようになった。
 書き方を覚えるため、小説を書き写した。1日13時間、鉛筆を握っていた時期もある。所持できる冊数が限られるノートを無駄遣いしないよう、アリのような大きさの文字で1行の枠に3行分の字を書いた。(引用元:毎日新聞 2021/11/7 オンライン版)

 「文章力を鍛えるための書き写す訓練はやはり効果がある」と感じさせられました。私は22~3歳のころ、この訓練を「させられ」ました。物理の研究者になるか空手家になるか迷いながら、空手の大恩師に流派の中枢の学習会に参加資格をいただきました。異例の抜擢でした。当然、嫌がる先輩たちもいました。

 その学習会の中身は、唯物論弁証法や認識論に関するゼミ。大学教授や新進気鋭の研究者たちもいました。そこに「空手に強いだけの学生」が入ってきたのですから嫌がられるのは当然。面接試験は非難の嵐。当然、不合格だと思っていたのですが大恩師の権威のおかげでお情けで合格。しかし、ゼミが始まると数時間ひと言も発言できず。「小林どうした?試合の時の元気はどこに行った」と嫌味を言われ続けて、さすがに凹みます。

 1泊2日の学習会が終わるときに大恩師に呼び止められました。「みんなに追いつく勉強法がある。やってみるか?」。そんな魔法のような方法があるわけはないと思いつつ、嫌とも言いにくく「はい」と返事。聞かされた勉強方法は以下。
・「弁証法とはどういう科学か(三浦つとむ著/講談社新書)」を書き写せ。
・原稿用紙に万年筆で書け。
小見出し単位で要約せよ。[200字,40字,20字]
 内心「は?」と思いつつも、怖い大恩師に嫌とは言えず「はい」と返事。

 偶々、大学は夏休み。単位はほとんど揃っていたのでヒマと言えばヒマ。こんな方法でアタマが良くなるとは思えなかったものの、馬鹿にされ続けた屈辱を晴らしたいとも思い、チマチマと書き始めました。[この項続く]