懐かしい訓練方法(2)

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【授業研究】 【授業研究】「ムショぼけ(小学館文庫)」の著者で元ヤクザの沖田臥龍竜氏は、刑務所で読んだ小説に感動して作家になろうと志しました。そのことを報道した新聞記事の一部が以下です。

 書き方を覚えるため、小説を書き写した。1日13時間、鉛筆を握っていた時期もある。所持できる冊数が限られるノートを無駄遣いしないよう、アリのような大きさの文字で1行の枠に3行分の字を書いた。(引用元:毎日新聞 2021/11/7 オンライン版)  

 この練習方法は私も経験したもの。方法は単純です。少し時間がかかるだけです。その経過を書いておきます。  大恩師に出された「宿題」を始めた私は最初はこんなことで頭がよくなるわけがないと感じていました。というのはほとんど一字一字を見ては書いている状態だったからです。小学生の漢字の練習みたいなものです。振り返りるとこの最初の1週間くらいがもっともつまらなくて、苦痛を感じていた時期でした。  

 1週間ほど過ぎた時に少し文章をまとめて覚えて書けるようになりました。最初より早く書き写せるようになりました。これだけでも少し楽しくなりました。このあたりからたぶん1日に10時間くらい書けるようになっていました。朝起きたらすぐに書き始めて、目と手が疲れてきたら散歩にでて、戻ってきたらまた書き始めるようになってきました。身体が慣れてきたという感じです。  そのころ指がぬるっと滑りました。あれ?と思いながらも書き続けていたら原稿用紙が真っ赤。中指のベンダコがつぶれていました。初めての経験でした。いやな気持はしませんでした。こんなに練習したのだと少しいい気分でした。  

 1ヶ月たつか立たない頃に頭の変化に気が付きました。だんだん長い文章を憶えて書けるようになっていました。2~3行をまとめて書くこともできるようになってきました。そのうち、次の段落に移るところで「具体的には‥」と書きたくなりました。ぐっと我慢してテキストを読むと、「具体的には‥」と書いてあります。これはとてもうれしいものでした。著者に少し近づいた気がしました。こうして全部を書き写すのには冬までかかりました。

 丁度終わったころに、ゼミ合宿がありました。 前回の沈黙とは異なりほとんどのテーマについて意見を出せました。議論に参加して、高く評価される場面もしばしばでした。休憩時間などに「小林、別人みたいだな。何があったんだ?」「この前は猫かぶっていたのか?」などと何度も声をかけられました。  最終日に大恩師が全体に向けてお話されました。「小林の変貌にみんなが驚く合宿になったが、小林がやったことは私がみんなに何度も話したことがある勉強法だ。みんな知っているはず。でも、本気でやった人はいない。やれぱこうなるということ」という趣旨でした。  多くの人が知っている学習方法。でも、ほとんどの人がやらないというのは今でも同じことなのかもしれません。でも、本当に力が付きます。多くの皆さんにお勧めしたい勉強法です。[この項終わり]