診断技術と治療技術(1)

【授業研究】ある組織の方と話をしていて昔々考えたことを使って説明して、「わかりやすい」と言ってもらいました。そのころは考えたことをノートに万年筆できちんとした文章にしていました。

 それは医療関係の人たちとよく会っていた時期のことです。彼らの話を聞いているうちに医療では「診断技術」だけでもダメで、「治療技術」だけでもダメ、と理解できたことがあります。当時、空手指導が私の生活の中心だったので、空手の指導に当てはめて「なるほど!」と感じたのです。

 空手の指導をしていると色々な指導者にあいます。私より上位の、ある高段者の指導者は、他者の技を見ると「あれがダメ」「これがダメ」と舌鋒鋭く厳しい評価をします。その指摘は私が見てもおおむね正しい指摘です。その意味では技の良し悪しをきちんと把握している方なのです。つまり「診断技術」はOKです。

 ところがこの方が個人指導を始めると‥「ダメ」「ダメ」を言い続けるのです。これでは懸命に練習している人は落ち込みます。「もう少し、どうすればよいかを教えてあげればよいのに‥」と思っていました。ある日、その方から私に「小林、こいつを指導してみろ」と言われました。「こいつは俺が何回言ってもよくならないんだ。それをお前が指導できるかどうか見てやるよ」。まあ実に嫌な人です。

 でもそのお弟子さんの技は時々見ていたので、私はおおむね何が問題なのかの仮説は持っていました。そこでまずはいくつか質問をして怪我や古傷などはないことを確認して、問題点について話し合いを始めます。それによって指導計画が決まったので、2~3の留意点を指示して練習をさせます。数回ごとに「どう?」と質問してまた繰り返してもらいます。そうこうしているうちに彼の技の癖はあっさりと治ってしまいました。時間にして約30分間です。お弟子さんはうれしそうです。

 そのプロセスを見ていなかったその方は、技が治ったころに戻ってきて「おお、よくなったじゃないか。やればできるじゃないか」と言います。お弟子さんがいなくなってからその方が私に言いました。「あいつは俺が小林に指導させたから、見捨てられると思って焦ったんだよ。だから頑張ったんだ。気合が入れば治るもんだ」。

 私は「はい」と返事をしたものの「そうじゃないんだけどなあ~」と思っていました。私はその後、空手指導における「診断技術」と「治療技術」を意識して開発し、その方法を大学空手部の上級生にも丁寧に教えていきました。その結果、常勝チームを作ることができました。そんなことを久しぶりに思い出しました。このことが授業改善にも大事な視点であることを久々に思い出しました。その内容については次回です。[この項続く]

※昨年秋から継続しているオンライン連続講座の案内は以下です。
◎「みんなのオンライン職員室」はこちら→ https://minnano.online/
◎「Find!アクティブラーナー社」はこちら→https://find-activelearning.com/
◎「アクティブラーニング入門3(小林昭文著/産業能率大学出版部)」は
  こちら→https://www.amazon.co.jp/dp/4382057744/

f:id:a2011:20200204054022p:plain

◎お問い合わせ、研修会講師等のご依頼はこちらへとうぞ。
  →akikb2★hotmail.com ★をアットマークに替えてください。