【授業研究】担任スキルの原則は「安全安心の場をつくる」ことにしました。なぜなら、担任と生徒が信頼関係で結ばれることが必要だからです。ここまでは、誰でも言います。問題は「それをどうやってつくるか」です。
「信頼しているよ」「仲良くしようね」と生徒に話すことではありません。「話している内容」よりも「やっていること」の方が生徒には大きな影響を与えます。そこである人に教えてもらって私が担任として行動の原則は「あ・い・さ・つ」にしました。
やってみると、これは意外に難しい。「明るく」は簡単ですが、「いつも」が難しいのです。体調や個人的な生活上の不安やトラブルがあればそれだけでも揺れます。仕事上のことを考えながら廊下を歩いていると「先生、こわいよ」と言われることもあります。私はこれを空手の技の修練みたいなものだととらえて、毎日意識的に取組みました。それらがようやく身に付いたと感じるまでに3年くらいかかりました。
これを「担任スキル」の基本と捉えるだけでも、「授業者スキルと担任スキル」の矛盾を理解してもらえると思います。例えば朝のSHRに遅刻してきた生徒に「また遅刻か!今月何回目だと思っているんだ!」と怒鳴ると、それを見たクラスの生徒は「こわい」と感じます。1年間笑顔で挨拶してきていたとしても、一瞬で崩れます。
「遅刻してきた生徒に注意するのは当たり前だろ」と言われるかもしれません。しかし、怒鳴れば「遅刻はなくなるのか?」なのです。仮になくなったとしても、それは「恐怖による支配」なのかもしれません。その先生が授業者として「自由に話し合ってくださいね」と言っても生徒は信じません。話し合わないと叱られるから「話し合っているふりをしよう」とやっている可能性も高いのです。
このような構造を私は「授業者スキルと担任スキルの矛盾」と称しています。ここを乗り越えるには例えば「怒鳴らなくても遅刻を改善するスキル」が必要になります。それは色々あります。定年退職間際に担任した3年生のクラスに「学年で1番の遅刻の王者」がいました。怒鳴ることをしない私はこの生徒に怒鳴ったり叱ったりはしないものの、様々な手立てを使って指導しました。2学期以降の約半年間はこの生徒は「遅刻ゼロ」で卒業しました。つまり授業者スキルと担任スキルの矛盾をつくることなく、担任としてもうまくできたということです。[この項終わり]
◎新刊「アクティブラーニング入門3(小林昭文著/産業能率大学出版部)は
◎小林のHPはこちら。研修会講師のご依頼もこちらからどうぞ。