Bさんとの対話3

【授業研究】Bさんとのメールでの対話の中で私が気になったことをとりあげます。

〈3  生徒から相談を受けたことがない先生は案外多い?〉

 Bさんのメールの部分です。

> 現場に戻って一年が経ちましたが、
> ようやく教師の「鎧」が外れてきた​と思います。​
>  以前の自分に戻らないように、口調、声のかけ方、態度など​
> を小林さんの本
>「アクティブラーニングを支えるカウンセリング24の基本スキル」​
> をもとに、気を付けるようにしていました。​
> すると、ようやくですが、生徒から何気ない会話や相談事などを​
> 話しかけてくれるようになりました。​
​> 実は、恥ずかしながら今までなかった経験です。
 
 前半の「スキルトレーニング」の話題は後にして、生徒から話しかけてもらうことが「恥ずかしながら今までなかった経験です」の部分を先に取り上げます。このような先生たちは、実は案外多いのではないかと思います。
 私はしばしば先生たちとお茶を飲んだりお酒を飲んだりする席で、生徒たちから声をかけられて色々な話を聞いてきたという話をします。これに対して「生徒が教師に対して、そんなことを気軽に話しかけることが信じられない」という反応がしばしばあります。「そんな話を学校でするべきではない」と否定する先生もいます。オンライン・ショップのコーナーでは私の本に対して「この本に出てくる生徒たちは良い子ばかりだ。こんなに素直な生徒たちがいるとは思えない」というコメントが寄せられたこともあります。これは先生たちが生徒にとう声をかけているかにも原因がありそうなのです。
 私は新任のころに忘れられない思い出があります。とても温厚な教頭先生が、何かの折に新任の教師の前で話してくれたことです。荒れる学校でした。暴力的で、いつもイライラしていて、教師に対して反抗的な生徒がたくさんいる学校でした。放課後、校内を巡回していた教頭先生は、途中で生徒用トイレに立ち寄って小用を済ませました。この時、先に番長格の生徒がいました。
 教頭先生は並んで用を足しながら「寒いね」「今日のテストはどうだった?」と声をかけました。その生徒は「寒いっす」「全然だめでした‥」などと答えて、先にトイレから出ていきました。教頭先生は少し遅れて用をすませて手を洗って外に出ました。するとそこにさっきの生徒が立っていました。薄暗くなった廊下で生徒が立っていたので、待ち伏せていたのかと「ぎょっ」としたとのことでした。しかし、待ち伏せではなく、この生徒は次のように話しかけてきたと言います。
「先生、ありがとうございます。俺、学校の先生に叱られる以外に声をかけてもらったのは初めてでした。すげえうれしかったです。ありがとうございました。それだけ言いたくて待っていました」
と言って立ち去ったという話です。
 もう30年も前の思い出なのですが、鮮烈な記憶です。つまり、生徒が教師に話しかけてこないのは、教師が「叱る」「注意する」「成績が悪いことを指摘する」「提出物が出ていないことを叱る」「遅刻してきたことを責める」‥以外には声をかけていないことが原因だということでした。時代も違いますし、あれほど荒れる学校はもう日本中に存在しないのではないかと思います。これほど極端なことは今はないと思いますが、「生徒が先生に声をかけてこない」原因は、先生の普段の態度にあるかもしれないということです。
 では、どうすればよいか。次回のテーマです。[この項続く]
◎このあたりの理論的土台はこちらを参考にしてください。

 アマゾンはこちら→https://www.amazon.co.jp/dp/4866141018

f:id:a2011:20170903224345j:plain

◎小林のHPはこちら。研修会講師のご依頼もこちらからどうぞ。

  →http://al-and-al.co.jp