盲学校の研修会(2)

【授業研究】先日終了した都立文京盲学校で学んだことです。初めて盲学校からの研修会依頼をいただいたときにいささかの迷いはありました。勤務した経験もないし、見学すらしたことはないからです。しかし、「伝えるべきことがある」と感じていることがありました。そこでこの講師のお話を引き受け、そのことを伝え、多くの方から「その通りだ」「私たちが気を付けなくてはならないことだと自覚でした」などの声をいただきました。その内容は「甘やかさない」でした。このことについて少し詳しく述べていきます。

 3~4年前のことになります。ある県の県立高校の研修会講師を務めました。その時のA先生(教頭)にしばらくしてからまたお会いしました。その時にA先生はろう学校の校長先生でした。勤務校のすぐそばの普通科高校で私が講師を務めることを聞いて、勤務校の先生たち数人を連れてきてくれました。
 この時驚いたのはA先生が引き連れてきた聴覚障害をお持ちの先生のために、私の話を手話で同時通訳をしていたことでした。「いつ手話を勉強したのですか?」「ろう学校の校長になってからですよ」‥この回答に改めて驚きました。そのA先生がわざわざ「ろう学校のの先生たち」を引き連れて私の「授業改善をテーマにした研修会に参加された理由」を聞いて、私はまたしても驚かされました。

 A先生はこう話してくれました。「ろう学校に来てから、小林さんが物理授業を作るときに心掛けていたことは、ろう学校の教育でも大事だと痛感したのです。だから、直接聞いてもらおうと思ったのです」。こう聞いても私の頭の中には「ハテナマーク」が続きます。その内容は要約すると以下でした。

①ろう学校を卒業した人たちの社会適応率は「在籍期間」に反比例している。
②その理由が現場で見ていた理解できた。
③先生たちが善意で「生徒たちを甘やかす」からだ。
④小林さんが「優しいけど生徒たちを甘やかさない授業」をしていたことを
  思い出してこれを先生たちに聞かせようと思った。

 「優しいけど生徒を甘やかさない授業」の一例は「確認テスト」の時間が近づいてきたときのスキルです。「まだ終わんない~」「先生待って~」「テスト始めるのを5分延ばして~」などと口々に言います。これに対して私は「うんそうだね。今日の練習問題は少し多かったかもね~」「みんな頑張っているよね~」とニコニコして言いながらも、「でも時間だから始めましょう」とニコニコしながら確認テストを配布します。生徒の「気持ちは受容するけど、不適切な行為は許容しない」というカウンセリングで学んだ考え方とスキルです。

 A先生は「ろう学校の先生たちの指導はまさに気持ちも行為も受容してしまうのです。例えばあまり上手ではない手話をわかってあげてしまうのです。そうやって甘やかされて育った生徒たちは社会に出てから〈わかってもらえない現実〉に直面して挫折してしまうのだと思うのです」と言いました。

 盲学校からの講師依頼をいただいたときにこのA先生のことを思い出していました。その意味では、私の実践・スキルや考え方は盲学校の先生たちにも役立ちだろうと考えました。これが初めての盲学校での研修会を引き受けた理由でした。[この項続く]

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