Bさんとの対話1

【授業研究】Aさんとの対話を少し書きました。これに対して、何年か前から時々お会いしたり、メール交換しているBさんからメールをいただきました。いくつもの印象的な事が書いてありましたし、私の気づきも膨らみました。今取り組み始めている授業改善研究ともつながることなので、何回かに分けて述べていきます。以下の順番のつもりですが、途中で変わる可能性は「大」です。
〈1 生徒の安全安心を維持できない理由は授業者の不安や焦り?〉
〈2 「生徒が~をできるようにしてあげる」はボスマネージメント?〉
〈3  生徒から相談を受けたことがない先生は案外多い?〉
〈4   相談をしてもらえる先生になるためにはスキルトレーニング?〉
〈5   まずは授業者スキルの体系化を‥〉
 
〈1 生徒の安全安心を維持できない理由は授業者の不安や焦り?〉
 B先生のメール冒頭部分の抜粋です。
 
> ご無沙汰しております。
​> 突然のメールで申し訳ありません。
> 小林さんの「Aさんとの対話」のブログを拝見しておりまして、​
> 下位層の脱落が「成績を上げなくてはというプレッシャー」​
> によって、安心・安全の場が失われている、という内容に、​
> ハッとしました。
 
ここだけでBさんが私の文章を真剣に読んでくれてていることを
感じます。
更に、それを自分のこととしてとらえてくれているから、
このように自分自身を振り返り、
気づきを得ることかできるのだと思います。
メタ認知」の力が強いということもできます。​
> 私は、進学コースクラスの模試の結果を上げるように​
> 管理職から言われてから、自分にもプレッシャーがかかり、​
> 生徒に知らず知らずのうちに、
> そのことを気づかれていたように思います。
 
この構造は大変根深いものだと思います。
Aさんの場合は生徒たちの学年が上がったから、
それまでやっていないかった「確認テスト」を始めたことが、
下位層の停滞を招いたと想像できました。
その理由は要するに「大学受験が近づいたから」です。
Bさんの場合は明確に管理職から指示を受けていたのですから、
Bさん自身がプレッシャーを受けていたと自覚しやすかったのだと思います。
Aさんの場合も「指示されたわけではない」ものの、
似たような状況だったのだと思います。
 
このようなことは全国で起きているはずです。
文科省が県教委にプレッシャーをかけ、
県教委は管理職にプレッシャーをかけ、
管理職は教員(授業者)にプレッシャーをかけ、
教員(授業者)は生徒にプレッシャーをかける。
その結果が、自信と実力が高くない生徒たちの安全安心の場を破壊し、
下位層の停滞が起きるという構造です。
この時に下位層では「対話的な学び」もできなくなっている
ことにも留意するべきです。
 
私はBさんのメールに以下のように返信しました。
【返信抜粋】
そういうことですよね。
Aさんも無意識だったのです。
Aさんは一貫校なので、中3は楽しませていたのに、
高1になったので、大学受験を考えて
「当たり前に確認テストを始めた」と言っています。
Aさんの学校も進学校です。プレッシャーがあります。
私も越ケ谷高校に転勤した時に校長に言われたのは
「進学実績向上、選択者増加」でした。
私たち教員はこれらを当たり前に受け止め、
当たり前に生徒たちに頑張れと言ったり、
テストや宿題を増やしていきます。
それが生徒たちの安全安心を脅かし、点数が下がります。
先生はますます叱咤激励し、宿題・補習を増やします。
悪循環が始まります。
 
私が生徒たちにプレッシャーかけないで済んだ理由はなぜか‥
を考えてみました。
たぶん、以下のことです。
1 安全安心の場がないと生徒たちはチャレンジしない。
  だから「プレッシャーかけないことが最重要課題」と認識していた。
2 カウンセリングの体験から自分の行動が生徒に与える影響は熟知していたし、
  それをコントロールするスキルも有していた。
3 結果は気になっていたが、生徒たちの様子と模擬テストの結果は、
  充分に期待できるものだったので、「今のまま」進めることができた。
【返信抜粋終了】
 
 この返信を書きながら得た私の気づきです。
1について。
 「安全安心がチャレンジの原動力」であることを改めて実感しました。しかし、私の世代や父やその上の世代も含めて、長い間の日本の教育は「プレッシャーをかければ人現は頑張る」「生徒たちにはプレッシャーをかけないと動かない」を基盤にしてきたような気がします。これを大転換することが必要ですが、とても困難な課題です。
2について。
 「安全安心の場が人を成長させる」を私が実感できたのは長い間のカウンセリングの学習であり、相談係としての体験です。その過程で理論を知り、スキルを身に付けたこともとても大きいことです。理論とスキルなしには「自分が生徒たちにプレッシャーをかけていることすら理解できない」し、それを改善することもできないということです。ちなみにAさんもBさんも、全く暴力的な人ではなく、実に優しい先生たちなのです。そんな先生たちでもそうなのですから、大半の先生たちは相当気を付けるべきことです。
3について。
 ここが「授業スキル」の重要性です。プレッシャーをかけることなく授業規律・学習規律を維持できる生徒指導的なスキル、生徒たち同士の対話を促進することができるファシリテーション的な授業スキル、毎日の授業だけで大学受験まで学力を上げることができる教材作成を可能にする専門領域に対する深い理解と指導スキル‥などか不可欠です。
 最後の部分について補足します。私は越ヶ谷高校でのチャレンジする前に、もっと偏差値の低い高校でそれまでにない理系大学進学実績を上げていました。それがあったから、どの程度の問題を解ければよいのか、どこで生徒たちは躓くのか、どうすれば正しく理解できるかを熟知していました。この部分も最近の「いわゆるアクティブ・ラーニング」の流れの中では軽視されている気がします。[この項続く]
 

◎このあたりの理論的土台はこちらを参考にしてください。

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