Aさんとの対話の続き

【授業研究】昨日の記事の中で、Aさんのクラスで上位層が向上しているのに下位層が停滞している現象に対して、私は以下のように書きました。

 「普通はこの種の授業ではまず「下位層の成績向上」が実現します。その理由は下位層はこれまで1人でやっていたのでわからないことを乗り越えられないでいた。その積み重ねで自信喪失、意欲低下などが起きていたと考えられます」。この生徒たちが「みんなで協力する」授業になるとこれまで1人では乗り越えることができなかった壁を乗り越えることができるので、成績が向上します。

 下位層では点数の向上は簡単に起きます。それまで100点満点の0~30点くらいに留まっていた点数が30~50点くらいに跳ね上がるのは簡単なことだからです。これにより全体の平均点の向上が起きることになるからです。

 Aさんの事例ではこの下位層の向上が現象せずに上位層の向上だけが起きていたように見えていました。これは少し不思議な事だったのですが、Aさんのメールの返事からその背景がわかりました。

 「この学年の成績は最初は下位層が上がっていました。定期テストの平均点が70点超えるほどでした。しかし、続けていくうちに、下位層がまた戻ってしまいました」

 つまり私が「普通は下位層の向上が現象する」と書いていたことは「やはり」起きていたということです。これは予想通りだったのですが、問題はなぜ「下位層がまだ戻ってしまったか」です。Aさんは次のように続けます。

 「下位層の脱落は、2年目になってからだと記憶しています。1年目は成績についてあまり厳しいルールもなく生徒たちはのんびりしていました。しかし、2年目になり大学受験が近づいてきて成績をあげなくてはならないというプレッシャーが発生してきたころから下位層の脱落が起きてきた気がします」

「毎時間の確認テストもこの2年目から始めました。私自身も成績を上げる必要を強く感じていたからです。今、考えてみるとそのことがまずかったのかもしれません」

 要するに授業者にも「成績を上げなくてはならない」というプレッシャーがかかっていたということです。この授業者の気持ちはよくわかります。成績向上のタスクが強くなってきたリ、受験の成果を上げろと強制されると、どうしても「難しい課題」を出して生徒たちを鍛えようとする傾向が私たちにはあるということです。しかし、これが生徒たちにとっての「安全安心の場」を奪うことになると、「対話的な学び」が損なわれる傾向があるということです。

 私は「全員が満点になるしくみの確認テスト」を高2から始めて、高3になってからも続けていました。たぶんこのことが下位層の脱落が最後まで起きなかった大きな要因なのです。もちろん、その一方で「トップを見捨てない」課題も出し続けていました。

 

 Aさんとの対話は個別の事例、特殊な事例を掘り下げていますが、そのことが私が考えている一般論を裏付けてくれることになりました。このような対話を続けながら、「授業者スキルの体系化」と「対話を通した授業改善の方法」を更に鍛えていこうと思います。

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