【授業研究】日本経済新聞2019年8月12日(月)朝刊14ページに掲載された「高校生『学習離れ』防げず」という記事は気になります。早稲田大学教授・浜中淳子氏の指摘のうち、私にとって印象的な箇所は以下です。
1 高校生の「中間層の地盤沈下」ともいえる実態がある。
2 中堅進学校の生徒のうち平日の授業以外の学習時間30分以下が7割強。
3 学習時間30分以下の生徒の1/3は自分は「勉強を頑張っている」と言う。
4 中堅進学校の生徒の45%は「合格できそうでも入学後に
勉強についていけそうな大学は選ばない」と回答している。
5 高校生の進学意識は入試で何が課されるかにほとんど左右されないと言える。
これらの結果から浜中氏は、私たち大人は「大学入試を変えれば高校生の学びは変わる」と語ってきたが、それは「真」なのだろうか?と問いかけています。
私が定年退職前に最後に勤務していた高校はまさに「中堅進学校」で、「現役進学率が県内トップクラス」=「無理をしないで行ける大学に行く」生徒がとても多い学校でした。従って、1~5の指摘はとても納得できます。
その中で物理授業改善に挑戦していくと生徒たちの学びは変化していきました。友だちとの対話的な学びの楽しさと効果を実感した生徒たちは、放課後「帰れ」と言われるまで自主的に集まり勉強し続けました。理系進学実績もぐんぐん伸びていきました。
この経験から感じるのは、「大学入試改革」は必要だとは思うのですが、それ以上に、それを基に高校の先生たちが毎日の授業をどう変えていくかが、「高校生の学び」を支えるのだと思います。単なる「受験対策」をするのではなく、毎日の授業が生徒たちにとって「楽しくて、寝てる間もなく、成績向上の実感を得る授業」であれば、高校生の学びは変わります。改めて、毎日の授業改善に力を注ぐべきだと感じさせられました。
最後に。浜中氏はこう指摘します。
「そもそも4年制大学に進学しない、あるいは進学できない高校生たちも相当数に上るのではある。(中略)入試改革に飛びつく前に、エビデンスと現場の声に耳を傾けながら、吟味することの方がよほど大事な課題であるように思われる」
大学進学率は約50%。つまり半分は大学に進学しない、進学できない高校生なのです。私も色々な施策が進学する高校生のトップだけを見ているような気がします。しかし、現場では「進学しない・できない」半分の国民をどう育てるかが大きな課題なのだと思います。