「それどこに書いてあるのですか?」

【授業研究】Aさんと研修会で何を話すかを電話で打ち合わせていた時のことです。
「ビジネス社会で失敗が繰り返される原因は、大人たちが学校教育を受けているからだと、ピーター・センゲも言っているわけだし‥」
「ああ、そのことだけど、ピーター・センゲのどこに書いてあるのですか?」
「え?『学習する組織』だけど?」
「『学習する組織』は読んだつもりなんだけど、わからないのです」
「え?『前書き』=『改訂版によせて/マネジメントの一般体系』のところに書いてあるよ。冒頭のわずか10ページくらいの文章で充分だよ」
「え〜??わからなかった〜」
「うーん‥‥不思議だなあ〜しばしば、そういうことがあるんだよね」
「そういうことって?」
「うん、何かの本を読んで私はすごいことが書いてあるなあと思って感動したとするでしょ。それを、同じ本を読んだ人に、『あの記述はすごいよね』と話をしても、『そんなこと書いてあったっけ?』ということが、結構多いんだよね」
「へー」
「なんでだろうね?私だけ読み方が何か違うのかな?」
「それって、小林さんは自分の実践とつなげて読むからじゃないのかな?」
「というと?」
「実践とつなげていると、腑に落ちることは印象に残るから覚えているのだと思う。実践とつなげていないと、というか実践がないと単なる知識として読んでいくから忘れる。そういう読み方ができるのは、小林さんの強みだと思いますよ」
「なるほど。そういうことかもね」
  私はしばしば「人と違った感じ方」をします。心理分析を受けてもそう出てきます。これについて、いわゆる劣等感コンプレックスがいまだにあります。自分が思いついたことや感じたこと、アイデアはすぐには言わないことにしています。「変な奴」と言われるのではないかと恐れているからです。その思い付きは信頼できる人にだけ少しずつ話して、どうやら多くの人に理解してもらえそうだと感じたら、公的に発言します。それまでは黙っているので、誤解を受けることもありました。
 私はAさんをとても信頼しているので、いつも感じることをストレートに話しています。自由に話ができる数少ない相手です。今回はAさんのおかげで、長い間モヤモヤしていたことが少しすっきりしました。人と違う側面を「私の強み」と肯定的に捉えることが一歩前進です。