学校パイプライン説

【授業改善の必要性7】授業改善は「学校教育改革の中核」です。この意味を正確に理解するためには、工業化社会における学校教育の特徴を理解しておく必要があります。その本質的な狙いは、「1%のリーダーと99%の優秀なフォロアーを育成する」ことにありました。その構造の特徴は「学校パイプライン説」と「ヒドゥンカリキュラム」で表されます。
 まず「学校パイプライン説」です。これは民主主義の国家体制の中で、国民が自らの意志で行動し、その結果として「リーダー」と「フォロアー」が自動的に振り分けられてしまうという国家にとっては実に有効なシステムです。もし、旧ソビエト連邦共和国に代表される社会主義国家がやっていたように、一定年齢に達した子供たちを、「おまえは学者になるために大学へ」「おまえは工場労働者になるために就職を」「おまえはオリンピック選手になるために体育学校へ」と振り分けたら、不満が充満します。

 「学校パイプライン説」は図を見ていただければ一目瞭然です。初等教育ではほとんどの国民が同じ太いパイプの中を歩きますが、年齢が進むとところどころに分かれ道があり、これを進んでいくと、国民はきれいに区分されるというわけです。
 このパイプの出口には「就職」がありました。順調に生産力が向上していく工業化社会においては、学校パイプラインのどのレベルの出口から出ても、「確実に就職があり」、「我慢していれば確実に生活の質が向上した」のです。だから、国民は自らパイプラインの中を歩きます。少しでも上を目指して歩きます。分かれ道で残念な結果になっても、ゆるやかに進むパイプラインの中で、それなりに納得して、自分のレベルの幸せを目指すことができます。そこにも、リスクの少ない安定した生活が保障されていたからです。(この項続く)