カタチを変えるだけで動きが変わる

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【授業研究】鹿児島での4日間は濃密でした。書き留め、振り返るべき出来事がたくさんあったのですが、その時間もありませんでした。これからそのうちのいくつかをこのブログに取り上げていきます。詳細は月刊誌連載や単行本の原稿にしようと思います。

 中学生の「総合的な学習の時間」でのことです。廊下から眺めてみると全員が机に向かいPCで何かを書いています。机はいわゆるフツーの教室型の配置。全員が前を向き、隣とは距離を取っています。何となく生徒たちはまじめにやっているものの、先生に監視されて肩に力が入り、緊張しているようにも見えます。これは私の偏見かもしれせんが‥。

 担任の先生は話す回数が多い先生で、話しかけやすいのでちょっとひと言。
「今、この座席にしている意味は何ですかね?」
「あ、そうですね‥みんな、グループ席になろう!」
 担任の先生の即断即決で、いきなり6人1組のグループ席になってしまいました。実を言えば私は変更指示をするつもりはなく、すこし考えるヒントを出そうとしただけでした。ちょっとびっくりしましたが、動いてしまったのを基に戻すのも混乱を招くので、「ま、いいか」とそのままにしました。私がそう考えているうちに担任の先生は隣のクラスにも行って声をかけて、そのクラスもグループ席になってしまいました。このあたりの担任の先生同士の連携と柔軟性はお見事です。

 さて生徒はどうなったか?相変わらずPCに向かって書いているのですが、肩の力が抜けているのがひと目でわかります。これは肩の高さが1~2センチ下がるのでとても判断しやすい現象です。生徒の緊張がかなりほぐれたことを推測させます。更に、何人かの生徒たちは隣の生徒に話しかけたり、隣の友達のPC画面をのぞき込んだりしています。先ほどまでのカタチではなかった光景です。カタチを変えただけで生徒たち同士のコミュニケーションと協働が始まったということです。

 10分ほど他の教室を見てからまとこのクラスに戻ると‥生徒たちの一部は立ち歩いて友だちのところへ行き小さな声で囁いています。長時間ではなく2~3分間で自席に戻り自分の作業に戻ります。先ほどよりクラスが活性化していると感じます。とはいえ、ワイワイ、ザワザワではなく、PCに向かって書き続けています。

 「グループで話し合いなさい」と指示をしたわけではないのですが席のカタチを変えただけで生徒たちの学びが変わったと言えそうです。実に興味深い発見でした。