「振り返り」の重要性と具体的な方法(3)

【授業研究】(1)と(2)を通して「振り返り・リフレクション」の理論的な仕組みとして「コルブの経験学習モデル」を説明しました。また、生徒に納得してもらうために説明を工夫したこともとりあげました。今回は「グループダイナミクス」の視点から説明をします。この説明をしておかないと、「確認テストとリフレクションのいずれか1つを選択するとすればどちらが良いでしょうか?」の質問に回答できないからです。

 その土台は「グループダイナミクス(集団力学)」という考え方です。その元はクルト・レヴィンが「場の理論(Field Theory)」を出したことに始まります。最近、あちこちで取り上げられるようになった「氷山モデル」という考えの土台です。この理論は私が学んできた物理学に密接につながるので、今回はこの解説から始めます。

 皆さんは中学・高校の理科・物理で、「プラスの電気とマイナスの電気が引き合う」「磁石のN極とS極が引き合う」「質量(重さみたいなもの)がある物体同士は引き合う(万有引力)」などを学んできたと思います。これらの力は「物体と物体の間で働く」というイメージをお持ちだと思います。物理学ではこの考え方を「遠隔作用」といいます。つまり遠く離れていても働く力というわけです。中学校の理科まではこの立場で説明しています。

 しかし、高校の物理からは「近接作用」で説明します。電荷(プラスかマイナスに帯電した物体)を例にとります。例えば「プラスの電荷」の近くに(遠くても良いのですが)もう1つの「マイナスの電荷」を持ってくると互いに引っ張り合います。古典的には「遠く離れても力を及ぼしあう」ととらえていました。これを「遠隔作用」といいます。しかし、現在では以下のように捉えています。

 まず最初に「プラスの電荷」を持ってくると、周りの空間を変化させます。電荷によって変化した空間のことを物理では「電場(でんば)」と言います。工学系では「電界(でんかい)」と言うことが多いようです。いずれも英語では"electric field"です。

 2つ目の電荷、ここでは「マイナスの電荷」を持ってくると、その電荷は「変化した電場から力を受ける」と考えます。つまり「プラスの電荷」に接している「空間=電場」が変化し、次の「マイナスの電荷」はこの「電場」に接することになり、この電場から「力を受ける」と捉えます。だから「近接作用」といいます。

 このことは現代物理学における考え方の「大転換」でした。それまでは「空間」というのはただ何もない「広がり」だと捉えていたからです。しかし、この空間を電場・磁場・重力場などの「実在」と捉えないと様々な物理現象を説明できなくなってきたのです。その一例が「電波」です。「電場と磁場で構成される空間=電磁場」が振動し、その振動が空間中に広がっていく、ととらえないと説明できないのです。更に最近になって「重力場の実在」も観察されました。

 レヴィンはこの物理学の考え方を社会学にも応用しました。つまり、集団において人間が変化するのは「人と人」が「遠隔作用の力」によって変化するのではなく、大勢の人たちが作り出す「場」があり、そこに参加する人たちはその「場」から「力=影響」を受けると考えることを提案しました。

 今では多くの人たちが「安全安心の場をつくるべきだ」と言います。この表現は無意識であっても、レヴィンの「場の理論」を認めているということになります。今日はここまでです。[この項続く]

★参考になる記事です。
https://kokoronotanken.jp/kuruto-revinto-banoriron/
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/2011/09/post-328.html

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