コーチングの傾聴技法とアクションラーニング(質問会議)

【授業研究】大学授業の中での学生からの質問です。
コーチングでは傾聴技法が大事と学びました。とは言え、過度なうなづきや相づちは相手に同調圧力を与えることになるから気を付けるべきとも言われました。アクションラーニングの時は、誰かに発言にみんながウンウンと相づちをうつのはどうも変な感じがします。どう考えればよいですか?」
 私は以下のように回答しました。
「まず、アクションラーニング(質問会議)でも基本ルールの中で〈傾聴〉をとりあげています。しかし、ここでは、カウンセリングやコーチングいうような細々とした傾聴スキルを指していないと思います。〈丁寧に人の話を聞く〉程度の意味です」
「次にカウンセリングやコーチングで傾聴スキルを重視するのは一対一の対人関係技法だからです。カウンセラーやコーチの言動は直接クライアントに大きな影響を与えます。そこで、信頼関係を築くために細々とした技法を使い、でも過度に誘導しないようにブレーキもかける、ということになります。
 一方、アクションラーニング(質問会議)にはカウンセラーやコーチのような専門家が入ることを想定していません。偶々、そういう人がいたとしてもセッションの中では〈対等〉の原則で参加してもらうことになります。だから、〈特別な傾聴スキル〉は不要です。全員がコーチング・トレーニングのようにウンウンうなづいたら気持ち悪いですしね。
 従って、アクションラーニングでは普通に対応すればよいと思います。どちらかと言えば、『なるほど』『たしかに〜』などもあまり言わない方が良いと思っています。問題提示者を誘導することになりかねないからです。どんな聞き方をするかよりも、どんな質問をするかです。その質問も専門家が1人でつくるわけではありません。素人がその時に感じた疑問や気がかりを次々に質問の形で提出することによって、問題提示者やメンバーに新しい気づきが〈偶然〉起きてきます。それがアクションラーニングの醍醐味だと言っても良いと思います」
 カウンセリングやコーチングが体現しているリーダーシップの在り方も、これからは変わっていくのかもしれません。