動き出したプロジェクト

 アクションラーニングの学習に力を入れている当時、東北地方の高校に校内研修会の講師に呼んでもらいました。校長先生からの依頼のひとつは、「新しく立ち上げたプロジェクトがなかなか動き出せないみたいだ。これを指導してほしい」でした。私がしばしば行けるのならリードする方法もありそうですが、遠隔地です。それはできそうにありません。何より、校内の先生たちが自主的に動き出すのが理想的です。そこで思い出したのがアクションラーニングです。

 ALコーチ(アクションラーニングを運営する進行役=ファシリテーター)はチームをリードしたりティーチングすることを極力控えます。それはチームメンバーが自主的・主体的に動けるようにしていくことを狙っているからです。カウンセラーやコーチにクライアントが時折依存的になる欠点を補う大切な特徴だととらえています。
 さて、そのセッションは以下のように展開しました。チームで共有する問題ですから、「とりあえずの問題提示者」をたてて、進めていきます。メンバーから出てきた発言は、「プロジェクトチームに入ったが、何をどうやっていけばいいのか、わからない」「私もよくわからない。じゃんけんで負けたもので‥」「私もあまり考えていなかったなあ・・・」との発言が続出します。コーチとしての私は「そんなぁ…」と驚きの連続でした。でも、今振り返ってみると、メンバーの先生たちは実に率直でした。真剣にセッションに向かってくれたからこそ、本音を出してくれたのだと思います。始めるときそばにいた校長先生が「俺がいない方が良さそうだ」と早々に退出されたことも素晴らしい気遣いでした。
 このセッションのの再定義は「プロジェクトの内容と進め方について、共通理解がないのが問題だ」となり、行動計画はかなり綿密なものとなりました。私はこの日1日で帰ってしまいましたが、翌週からプロジェクトは動き始めました。2年後、当初予定通りにプロジェクトは進み、県内での発表も大好評だったとのうれしい報告をいただきました。