【授業研究】「産声が消えていく(太田靖之著/祥伝社文庫)」を読み終えました。本屋で平積みにされていた時には、下の画像とは異なるカバーが付いていて、そこには「この小説はきっと事件になる」と書いてありました。
これを読んで、和歌山カレー事件を予言したと言われた「黒い家(貴志裕介/角川ホラー文庫)」を思い出し購入しました。私は和歌山県カレー事件の前に「黒い家」を読み終えていたので、事件の報道に驚き、報道が進むにつれて小説に酷似していることに気が付き、その恐ろしさに毎日ドキドキしていた記憶があります。
しかし、この小説はある意味では「黒い家」以上に恐ろしい小説でした。
ホラー小説ではなくほとんどが実際に報道された産科を中心とした事件をつなぎ合わせた「事実のレポート」に近い小説です。登場している出来事の大半はいつか新聞で読んだような気がする内容ばかりです。最後のページで著者は「全て架空のもの」と断っています。その結びは「現実との相似は偶然の産物以外の何物でもありません」です。このひと言が語り部の最後の「脅し文句」のように響きます。
産科を中心とした医療崩壊。すでに現実のものになっている恐ろしさがあります。