高校生に「対話力向上トレーニング」

【授業研究】「対話的な学び」を実現するには、先生のファシリテーションも大事ですが、生徒の「対話力向上トレーニング」も必要だと思っています。スーパーバイザーを務めている横須賀市立横須賀総合高校で生徒向けのトレーニングを先日実施しました。

 この何か月かの間に色々な方からのリクエストに応える形で整えてきた「質問力トレーニング」を「探究活動のテーマ決め」のためにアレンジして実施しました。先日行ったのは各クラスの代表生徒たち32名相手でした。

 ここで大事な設定をしていました。それは「探究活動のためだけの対話力向上トレーニング」ではなく、「教科授業のグループワークの質的向上」のためであると位置づけていることです。こうして「探究活動・総合的な探究の時間」と「教科授業」の相互浸透・相互発達をつくる意識が大切だと思っています。

 私にしてみると高校生相手のグループワークは久々のことです。少々緊張しましたが、生徒たちの真剣な態度に支えられました。このあとは、これを基に先生たちにこのワークを体験していただきながら、「探究活動の指導の仕方」をお知らせします。これも楽しみです。

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大学オンライン授業の問題点(2)

【授業研究】昨日(2020/11/08)の続きです。
私がお手伝いした大学のオンライン授業は好評だったのに、
実は現状は以下ですよと聞いて驚きました。

その内容は以下です。
A Zoomを使ったオンライン授業が増えたけど学生には不評。
B 配信型の授業も他の授業は不評。
詳しく聞くと次のような状況でした。

AではZoomでリアルタイムで講義をしているということです。
その講義が「ワンウェイでわかりにくい、つまらない」ということのようです。
それはつまらないだろうなあ、と思います。

 2つの問題を感じます。
1つ目は「なぜワンウェイの講義なんだろう?」です。
Zoomならグループワークもできるし、
学生に発表させることもできます。
講義を事前に動画等て配信すればオンラインでは
「質疑応答」中心に進めることもできます。
私は毎月数回程度のオンライン研修会講師を担当していますが、
色々な方法を開拓して使っています。
2つ目は「ワンウェイでも楽しく聞けるようになるのに‥」です。
失礼な言い方になりますが、
もしワンウェイにこだわるなら学生が飽きないような講義を開発すべきです。
学生は高い授業料を払っているのですから。
私はその自信がないので他の方法で補っています。

Bは不評の理由は私にとっては意外なことでした。
それは「音声説明がない」ということでした。
これも理解するのに苦労しました。
いくつも質問してようやく理解できた内容は以下です。

どうやら普段の授業で使っているパワポのデータを配信しているだけです。
その説明を「ノート」の欄に少し書き込んでいるのです。
しかし、パワポも見てもノートを見ても意味が分からないと学生は言うとのこと。
私と話している大学の先生も
「実は私が読んでも意味が分かりませんでした」とのこと。
更に「課題の指示も意味不明なのです」。

私がアドバイスした配信型の授業は
パワポでの説明を基にした「音声付き動画」です。
学生アンケートに「音声付きだからわかりやすい」と
あったことの意味がようやく分かりました。
他の授業にはそれがなかったということなのです。

 これらのことを考えると
大学の先生たちがもう少し努力するべきだと思います。
知人は来年大学受験をするお子さんが
「田舎の大学に行く方が良いと思う」と言っているとのこと。
大学のオンライン授業の質が低いままだと、
学生の動向が変動することも大いにありそうな気がしてきました。
[この項終了]  

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大学オンライン授業の問題点(1)

【授業研究】某大学のオンライン授業をこっそり手伝っています。
私が手伝った方法はいわば「オンデマンド授業」です。
つまりパワポを使って説明した内容を動画にして配信します。
学生には好きな時間にそれを見てもらい、
一定の期間内に課題提出を義務付ける方法です。
これはなかなか好評でした。

「自分の都合の良い時間に視聴できるからいい」
「早き送りしたり止めてみたり、繰り返し見たりができるからいい」
「音声の説明がついているので理解しやすい」
等々の学生の感想がたくさん届きました。
そのせいか、後期は受講者が増加したようです。
担当の先生は受講者が増加して提出物のチェックは増えたものの、
配信データはほとんど前期と同じなので「楽です」とおっしやいます。   
 更に「対面型になってもこの動画を使った方が
個別最適化の授業になりそうです」と意欲満々です。

 その大学の先生と話していて驚いたことがあります。
その内容です。
1 Zoomを使ったオンライン授業が増えたけど学生には不評。
2 配信型の授業も他の授業は不評。
 最近の私はZoomを使った研修会を盛んにやっています。おおむね好評です。
お手伝いした授業は配信型なのに「配信型は不評なのはなぜ?」と疑問が湧きます。
その内容は明日にします。[この項続く]  

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大学オンライン授業での顔出し不可?

【授業研究】大学のオンライン授業に問題が浮上してきているようです。それはZoom等で行う授業の際に学生が顔を出すことの問題です。
・学生(特に女子学生)が顔出しを嫌がる。
・大学が教授たちに「顔出しを強制しないで」と指示をしているところもある。
・教授の中には「出席が取れないから」と顔出しを強制した人もいる。
・「全員が顔出し拒否している真っ黒な画面に向けて講義をするのはつらい」と
  嘆く教授もいる。
 概要はこんな感じです。詳細を述べます。

1 学生は顔出しによるプライバシー侵害を恐れている。
  「顔」「フルネームと学籍番号」をZoomで90分前後出していれば、
   先生や他の出席者がこれらを記録することは簡単です。
   あとはネットで検索すれば個人情報はいくらでも取り出されそうです。
2 教授陣は出席が確認できない、講義がやりにくい。
   ビデオオフだとそこにいるかどうかわからない、反応が見えない、
   だから、出欠確認や成績評価がやりにくい。
3 小中高校でも大学でも「自分のプライバシーを守れ」と教育している。
   9月ごろから大学生の「顔出し」「学籍番号・フルネーム表示」は、
   「パワハラアカハラになる」という意見がネット上で出回った。
   これにより後期のオンライン授業で顔出し拒否の学生が増えたらしい。

 上記までの下書きを書いた後でわかってきたことがあります。女子学生だけに多いわけではなさそうです。男女ともに「嫌がる」という話も多いようです。その背景は小中高校で教わってきた「インターネット使用上の注意」の指導にあるようです。インターネット上に「氏名、住所、名前、顔、場合によっては指紋」などの個人情報を出してはいけないと教わってきたからだという情報です。

 これは皮肉なことです。高校までの教育が大学の授業を窮屈にしているということです。では、どうすれば良いか‥。以下、私の思い付きです。
➀Zoomの仮想背景を使ってwebカメラのレンズを紙などで隠す。
  こうすると本人の顔は映らないけど背景は映るので
  真っ黒な画面ではなくなります。
➁オリジナル背景を自分で作って➀と同様にする。
  個性的な背景画像を作成して教授に知らせておく。
  講座の出席番号があれば教授は識別できる。
➂Snap Cameraというソフトを使ってアバターのような顔を出す。
  ハロウィン用や気持ちの悪いものが多い。これで授業受けたら叱られそう。

 うーん‥。今のところ➁が良さそうです。他のアイデアありませんか? 

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中学校の授業改善着々

【授業研究】逗子市教育委員会のスーパーバイザーの仕事もようやく対面が復活してきました。昨日は私立久木中学校に伺いました。公開授業と研修会は午後なので、午前中に伺って「普段の授業」を見学しました。

 多くの先生たちが全体の研究方針に沿って「めあて」を示し、スケジュールを示して授業をやっています。生徒たちも寝ている生徒は皆無。ちよっと驚きの状態です。

 研究主任や管理職と話して全体研修会では、「もっとレベルアップするためのアドバイス」をいくつかアドバイスしました。その場でも積極的な質問が出てきましたし、終了後に校長室まで押しかけて質問をしてくれた若い先生たちもいました。

 この変化はうれしいことです。来週は別の中学校にも行きます。市内の小中学校の授業が変わっていることが楽しみになってきました。[「振り返り」の重要性と具体的な方法 はひと休みしました]

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「振り返り」の重要性と具体的な方法(3)

【授業研究】(1)と(2)を通して「振り返り・リフレクション」の理論的な仕組みとして「コルブの経験学習モデル」を説明しました。また、生徒に納得してもらうために説明を工夫したこともとりあげました。今回は「グループダイナミクス」の視点から説明をします。この説明をしておかないと、「確認テストとリフレクションのいずれか1つを選択するとすればどちらが良いでしょうか?」の質問に回答できないからです。

 その土台は「グループダイナミクス(集団力学)」という考え方です。その元はクルト・レヴィンが「場の理論(Field Theory)」を出したことに始まります。最近、あちこちで取り上げられるようになった「氷山モデル」という考えの土台です。この理論は私が学んできた物理学に密接につながるので、今回はこの解説から始めます。

 皆さんは中学・高校の理科・物理で、「プラスの電気とマイナスの電気が引き合う」「磁石のN極とS極が引き合う」「質量(重さみたいなもの)がある物体同士は引き合う(万有引力)」などを学んできたと思います。これらの力は「物体と物体の間で働く」というイメージをお持ちだと思います。物理学ではこの考え方を「遠隔作用」といいます。つまり遠く離れていても働く力というわけです。中学校の理科まではこの立場で説明しています。

 しかし、高校の物理からは「近接作用」で説明します。電荷(プラスかマイナスに帯電した物体)を例にとります。例えば「プラスの電荷」の近くに(遠くても良いのですが)もう1つの「マイナスの電荷」を持ってくると互いに引っ張り合います。古典的には「遠く離れても力を及ぼしあう」ととらえていました。これを「遠隔作用」といいます。しかし、現在では以下のように捉えています。

 まず最初に「プラスの電荷」を持ってくると、周りの空間を変化させます。電荷によって変化した空間のことを物理では「電場(でんば)」と言います。工学系では「電界(でんかい)」と言うことが多いようです。いずれも英語では"electric field"です。

 2つ目の電荷、ここでは「マイナスの電荷」を持ってくると、その電荷は「変化した電場から力を受ける」と考えます。つまり「プラスの電荷」に接している「空間=電場」が変化し、次の「マイナスの電荷」はこの「電場」に接することになり、この電場から「力を受ける」と捉えます。だから「近接作用」といいます。

 このことは現代物理学における考え方の「大転換」でした。それまでは「空間」というのはただ何もない「広がり」だと捉えていたからです。しかし、この空間を電場・磁場・重力場などの「実在」と捉えないと様々な物理現象を説明できなくなってきたのです。その一例が「電波」です。「電場と磁場で構成される空間=電磁場」が振動し、その振動が空間中に広がっていく、ととらえないと説明できないのです。更に最近になって「重力場の実在」も観察されました。

 レヴィンはこの物理学の考え方を社会学にも応用しました。つまり、集団において人間が変化するのは「人と人」が「遠隔作用の力」によって変化するのではなく、大勢の人たちが作り出す「場」があり、そこに参加する人たちはその「場」から「力=影響」を受けると考えることを提案しました。

 今では多くの人たちが「安全安心の場をつくるべきだ」と言います。この表現は無意識であっても、レヴィンの「場の理論」を認めているということになります。今日はここまでです。[この項続く]

★参考になる記事です。
https://kokoronotanken.jp/kuruto-revinto-banoriron/
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/2011/09/post-328.html

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「振り返り」の重要性と具体的な方法(2)

【授業研究】私が「リフレクションカード」を導入した時のエピソードです。2007年度に大幅な授業改善を始めた私は「コルブの経験学習モデル」を理論的な中核に据えました。そのために「振り返り」を重視することになります。「振り返り」の構造は「いつやるか」と「どこに焦点を当てるか」でそれぞれが2つの構造に分かれます。このことは後述します。

 いずれにしても生徒に「毎回振り返りをさせる」ことが大事になります。しかし、その当時は「振り返り」という言葉も「リフレクション」という言葉もほとんど使われていませんでした。そこで高校生が納得する説明と、受け入れやすいネーミングを考えました。結果は「リフレクション」を採り入れ、「リフレクションカード」をつくることにしました。この時に生徒に説明のように説明しました。

 物理では「リフレクション refletion」は大事な用語です。光などの「反射」という意味です。英和辞典を引くと"reflection"の訳語には以下が並んでいます。
「(光・熱などの)反射、(音などの)反響、(鏡などの)映像、(水などに映った)影、
 よく似た人、(状況・事情などの)反映、投影、影響、熟考、内省」(weblio)

 「反射」は当然としても「熟考・内省」と出てくるのは不思議ですよね。これはこういういわれがあります。顔に付いた汚れを私たちは直接見ることはできません。でも鏡に映すと見えますよね。つまり鏡に反射(reflection)した自分の顔を見て〈気づく〉というわけです。このことからreflectionは〈気づき・振り返り・反省・省察・反省〉などの意味にも使われるようになりました。

 物理の授業も私の説明を聞いて「終わり」にすると、みんなはこの時間に「何がわかったのか」「わからなかったのか」「話し合いができたのかどうか」「次の時間にはどう臨もうか」などということを考える機会はありません。そこで「リフレクションカード」です。鏡みたいなものです。この時間に自分は何を学んだか、わかったこと・わからなかったことは何か、話し合いはできたか、次はどうしようか‥などを考えて「気づき」を得るための「鏡」がリフレクションカードです。これを使って「コルブの学習サイクル」を回すことができる大人になりましょう。

 以上です。これは大成功でした。生徒たちは初めて聞く「リフレクションカード」でしたが、物理に関わる用語だと受け止めると抵抗なく理解してくれました。最近では「振り返り」も「リフレクション」も小学生でも知っている時代ですから、こんな苦労は不要かもしれません。でも「なぜ、反射=reflectionが、振り返り・気づきという意味なの?」と質問されたら、こんな解説も役立つかもしれません。お使いください。[この項続く]

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