練習体系がないとスキル伝達ができない

【授業研究】しばしば言われることですが、時々名人芸と呼ばれる授業をする授業者がいます。過去にも色々な伝説を残した授業者がいます。しかし、その後継者がいないような気がします。そもそも、何がどんな風にすごかったのかが良くわからないように思われます。

 武道の世界は少し違います。宮本武蔵は間違いなく名人・達人だったと思われています。その立ち合いを見た人が現存するわけでもなく、動画記録があるわけでもないのに、その強さは信じられています。北辰一刀流千葉周作柳生新陰流柳生宗矩一刀流塚原卜伝など実に多士済々の名人がいたことが間違いないと信じられています。

 その理由は彼らが自分の闘い方、技の習得・練磨の過程、初心者からの修行方法などを書き残しているからです。剣道だけではなく柔道も同様です。その世界が残した技(スキル)のレベルに比べると、学校教育の授業スキルのレベルはとても低いと言わざるを得ません。その理由は社会学的な背景にあるのですが、それはいずれ。

 武道の世界は名人・達人たちが、自分の闘い方を後進が実現できるように技の体系化を図り、文章化し、修行方法とともに代々伝達できる構造を作ってきたので、そのスキルを現在もある程度は伝えているのです。前節(2019/4/8)では「技の体系化・練習体系」がなければ大半の人たちは強くなる(うまくなる)ことに失敗すると書きましたが、もう一つの大事な側面は「伝達できない」ことなのです。

 実際、授業スキルは未だに経験主義的です。多くの人たが「自分勝手に」「見よう見まねで」やっているだけです。偶々、授業名人がいても、その技の体系化がなく、練習体系もなければ、その人限りで消滅してしまいます。うまい人の授業を見て、どこをどう受け継げばよいのか、そのためにはどんなトレーニングをすればよいのか、がわからないのです。

 私は武道家としての経験から授業改善を見ていると「技・スキル」が全く論じられないのが不思議で仕方がありません。そのくせ、ICT機器などの機会の導入は声高に叫ばれています。まるで「刀の振り方も知らない人」に名刀を高く売りつける悪徳商人が横行しているように見えてしまいます。

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