【授業研究】本日から「3 「学習としての体験授業」のあとに「振り返りと気づき」を促す構造が不可欠である。」です。
(全体の構成は下段を参照してください)
私は学習とは体験に続く、「振り返りと気づき」を引き起こす構造があるかどうかが最も重要だととらえています。それによって行動の変容も引き起こされると理解しています。逆に言えば「体験のみ」が重視されることが多いことに危惧しています。
その良い例がキャリア教育として行われる「職場体験・職業体験」です。多くの場合、子どもたちにとっては単なるレクリエーションに終わっています。その理由は「体験させる」ことに重点があり、その体験を「振り返り気づきを得る」ためのしくみが、その前後に計画的に組み込まれてていないからだと思っています。
「体験授業」の大半も同様です。さまざまなイベントで実施されている体験授業は、終わるとすぐに解散です。各自で体験している過程で何を感じたかなどをゆっくりと振り返る時間や、同一グループの中の人たちでそれらをシェアするしくみなどありません。何コマか続いているイベントでは、「ああ、楽しかった。さあ、次の授業に行こう」の繰り返しです。次の授業が始まれば、前の授業中に感じたことは、大半の人たちが忘れてしまいます。
私が「アクティブラーニング入門講座」で「学習としての体験授業」を組み込むときは、「振り返りと気づき」を重視します。最も簡単な方法で行う場合でも、以下のように進めます。
(1)始める前に「コルブの経験学習モデル」について説明します。
(2)体験する過程で、生徒役として「感じたこと・気づいたこと」を意識してください、
と解説します。
(3)態度目標「しゃべる、質問する、説明する、動く(席を立って立ち歩く)、
チームで協力する、チームに貢献する」を「意識してやってください」と
指示します。
(4)授業終了後。「生徒役として感じたことを書いてください」と指示して、
ポストイットカードに1枚に1項目ずつ書き出してもらいます。
(5)授業中に授業者としての私がやっていたことについて、少し解説します。
(6)「現実の自分(授業者としての自分)の立場で気が付いたこと」を
ポストイットカードに書き出してもらいます。
(7)授業者として、これから「やってみようと思ったこと」を
同様に書き出してもらいます。
(8)上記までは個人作業ですが、このあとグループワークに入ります。
次は「グループの人たちが書いたカードをテーブル上に広げて、
お互いのカードを読み、質問したり答えたりしながら、
感じたことや気づきを共有しながら、
『次はどんな授業をやろうか』ということを考え、共有してください」
と指示します。
この時間は10~15分くらいとります。
このグループワークを覗いていると、この時間にメンバーの皆さんに多くの気づきが生まれ、お互いに共有し、それによって新たな気づきが生まれていくことがよくわかります。例えば以下のごとくです。
「物理の問題が解けた!うれしかった」
「私も。高校生のときは全然わからなかったのに」
「解答解説があると安心だよね」
「そうそう。いつでも見ればよいからね」
「私は解説読んでもわからなかったけど、隣の人が説明してくれてわかった」
「先生に『チームで協力できていますか?』と言われて、
『質問していいんだった』と気が付いた」
「授業中なのに話していい、ってすごいよね」
「ウンウン。1人だったら絶対解けなかったと思う」
「私は1人でやろうと思ったんだけど、
『あと10分だけど順調ですか?』と先生に言われて、
『あ、間に合わない』と思ったら、質問していた」
「確認テストのときもドキドキしていたから、『話していい』と言われてほっとした」
‥‥これらの気づきを個々人が得て、言語化し、それを共有することによってさらに気づきが深まるためには、丁寧な仕掛けと、充分な時間が必要だと感じています。
実を言えば、私は上記の構造にも不足があると感じています。主な内容は以下です。
・チーム内のお互いに対する「感じたこと・気づいたこと」の振り返りがない。
・チーム全体の雰囲気の変化に対する「振り返り」がない。
・教室全体の変化を振り返るプロセスがない。
・逆に個人のプロセスに対しての詳細な振り返りが不足している。
これらを実施するには何より多大な時間が必要です。また、ある程度の基礎的な訓練を経ておく必要があります。その意味では上級者向けの練習ということになります。いずれは、そのような研修会を開きたいと考えています。
自分自身が常に振り返りと気づきを繰り返す授業者・リーダーが求められていると感じています。この研究も続けていくつもりです。(この項終わり)
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※長々とお付き合いありがとうございました。今日で終了した論考の全体構成は以下です。本日の部分は「3」です。
1 「新しい授業」を始めるのには、
「生徒役としての授業を受ける体験」が不可欠である。
(※この授業のことを「学習としての体験授業」と呼ぶことにします)
2 「学習としての体験授業」には必要な構造がある。
3 「学習としての体験授業」のあとに「振り返りと気づき」を促す構造が不可欠である。
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◎小林のHPはこちら。
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◎以前に出演したNHK Eテレ「テストの花道 ニューベンゼミ」が
またまた再放送されます。これが、6回目と7回目になります。
再放送される回は#45『疑問を持って、質問するチカラ』。日時は以下です。
2/12(月・祝)19:25~19:55 Eテレ
2/17(土) 10:30~11:00 Eテレ
この番組の内容を授業改善の視点から解説したのは、このブログの2018/1/18です。ご参考に。http://a2011.hatenablog.com/entry/2018/01/18/081418