「私語がとまらなくなったりしませんか?」

【授業研究】研修会でいただいた質問に対する回答です。
〈質問〉「こういうグループ活動は小中学校で応用はできますか?私語が止まらなくなったりしませんか?」
〈回答〉グループワークを入れると、とたんにみんながリラックスしてワイワイ話し合います。テーマからはみ出した話題になってしまったり、時間が来たので次の指示をしている時もおしゃべりが続いているグループや個人が出てしまったりすることもしばしばです。これをどうコントロールしていくかも大事なことです。問題は、ここで先生がイライラして怒鳴ったり、叱ったりしてしまうと、「安全安心の場」が崩れてしまうことです。
 そこで私は次のようにしていました。
(1)まずワークの内容と時間設定は適切になるように工夫しておく。
  (みんなで協力しなくてはできない、ちょっと急がないと終わらない)
(2)特に時間制限は明確にします。途中で各チームに対して残り時間を案内します。
  (各チームにタイムキーパーを置く、タイマーを表示する、「あと〇分」と声をかけて回る、など)
(3)時間が来たら、「終了です」と宣言し、「じゃ、次の指示をします」と話し始めます。
  (この時、ワイワイ話しているグループや個人がいてもかまわず説明をし、次の行動へ行かせます)
(4)全ての指示に際して基本的には繰り返さない。

 するとどうなるか?次の指示がわからない生徒がいます。チーム全体が他のチームの動きがわからなくなる場合もあります。個人が「先生、次は何をするの?」と聞いてきます。私は「どうすれば良いと思いますか?」「友だちに聞いてみましたか?」などと質問して、チームで協力することを促します。
 チーム全体がわからなくなっている時は「私たちはみんなわかりません。どうすればいいですか?」と言ってくることもあります。私は「そんなときはどうすればいいですか?」「他のチームに聞きましたか?」などと質問で対応します。いずれにしても、友だちや他のチームに質問して、あわてて次の行動に移ります。
 他の人たちや、他のチームが次の行動に移っているのに気が付かない個人やチームが出現する場合もあります。これに対しては「今、何をしていますか?」「今、みんなは何をやっているかわかっていますか?」などと質問します。すると「何をやればよいですか?」と私に質問してきますから、上記で述べたように友だちや他のチームに質問するように促します。
 要するに「小さな失敗」をあえてさせています。しかし、叱りません。「この先生は、どんどん進めていくんだ。よく聞いていないと遅れてしまう」「わからなくなったら友だちや他のチームに聞かなくては」「この先生は、同じ説明を二度とはしないんだ」などと理解してもらうことを狙っています。
 そのために、私は「繰り返しの説明をしない」ことも原則としていました。もうひとつ、誰か、或いはどこかのチームが大幅に遅れることがないように全員を細かく観察し続けていました。「小さな失敗」=「急げば追いつく、回復できる程度の失敗」にするにはきめ細かな観察が大事です。
 この方法は大人相手のワークでも私は多用しています。先生たちもグループワークをやると楽しくなって、次の指示を聞いていない個人やチームは出てきます。そんなときに「聞いていなかったんですか。駄目じゃないですか。生徒と一緒ですね」などと言うのは失礼だと思っています。そして、大人に対するのと同じように生徒・子どもにも対しています。子どもだから雑な対応をすることは「子供だまし」だと思っています。私は誰とでも同じように、対等な関係を維持していきたいと思っています。
 上記の対応は、「一人ぼっちの生徒」「ハンディキャップを持っている生徒」に対しては異なります。遅れたら、すぐに指示をします。振り返りと気づきを促す質問が苦手な生徒もいます。
【私が書いているのは全て私の実践を見たり聞いたりした方からの質問に対する回答です。私の授業実践が「唯一の正解」というわけではありません。私の授業が成功していた背景には、科目特性、生徒・学校の特性、小林の得意(生徒指導、カウンセリング、教育相談等)、などがあります。ただ、一般論だけを論じても伝わりにくいので私が何をしているのか、私が何を考えているのかを具体的に書いています。この通りにやるべきだといいたいのではなく、この実践を「ヒント」にして、みんなさんの実践を変えるきっかけになったり、議論を始めるきっかけになったりすることを期待しています。】