オンライン授業等の作り方(4)

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【授業研究】第4日のテーマは「体験から学ぶことの大事さ」です。世の中はPDCAばやりですが、「コルブの経験学習モデル(学習サイクル)」という考え方もあります。「アメリカのトップ企業はPDCAなんて使っていない。コルブの方が変化の激しい時代にはマッチしている」という意見もあるようです。(※1)

 私は2000年ごろにコルブのことについて知り、その後、キャリア発達理論やアクションラーニングを学びながら、ますますコルブに惹かれました。2007年度から始めた「新しい高校物理授業」は「生徒たちのアタマの中でいかにコルブのサイクルを回せるようにするか」がテーマだったと言っても過言ではありません。

 PDCAとコルブの違いは2つあると思っています。1つは「スタート前の計画の緻密さの有無」です。2つは「サイクルの長短の違い」です。これらが「オンライン授業の作り方」にも大きく影響します。新しい世界でもあり、色々なツールが次々に出てくるという意味で変化にとんだ世界でもある「オンライン授業等」に取り組むには、コルブの考え方をする方が効果的だと思います。

1 計画立てる時間に「やってみる」。
  PDCAの考え方を重視すると
 最初にやらなくてはならないのはP(プラン作成)です。 
 やったことがないことをやるためのプランつくりは困難です。
 書籍を集めたり、先行 文献を調べることになります。
 それだけで何日か過ぎるかもしれません。
  それよりお勧めは「まずはやってみよう」です。
 どこからでも良いのです。「パワポに音声を入れる」
 ことにチャレンジするのも良いし、その関連のYouTubeを視るの
 でも良いと思います。
 隣の席の若い人に「あなたはどうしているの?」と尋ねること
 から始めるのでも良いと思います。
 おそらくPDCAではこれらはP(プランを作る)にも
 なっていないのでしょうが、
 コルブではすでに「体験する」が始まっています。

2 振り返りましょう。
  少し行動・体験したら「振り返り」ましょう。
 半年1年たってから「振り返る」感のあるPDCAと異なり、
 コルブは「すぐに振り返ります」。やっている最中の  
 振り返りも大事にします。
 「振り返りの視点」と「振り返りのタイミング」が
 それぞ れ2つあります。これを覚えておくと役に立ちます。

3 2つの振り返りの視点
  「内容(コンテント)」を見る振り返りと、
  「過程(プロセス)」を見る振り返りです。
  例えば「パワポに音声を入れる方法のYouTubeを見て振り返る」
  とします。「内容」に対する振り返りは、「音声の入れ方」
  の何がわかったかです。
  「今自分が持っているソフトでできることがわかった」
  「新しい道具を買わなくても今持っているマイク等で
   できることが分かった」などのことです。
  これを「気づき」と言います。
  「過程(プロセス)」に対する振り返りとは自分自身の気持ちの変化です。
  「ちょっと安心した」
  「ドキドキしたけどYouTubeは意外に簡単だ」などを
  「意識すること」です。

4 「次はなにをしようか」を考えます。
   理論的にはこのプロセスが「抽象化・一般化」などと難しげですが、
  上記の「気づき」を基に「次はどうしようか」を考える段階のことです。
  「新しい道具を買わなくて良いから、このYouTube動画を最後まで見よう」
  「見終わったら試してみよう」などです。
  「意外に簡単そうだからもう少し自分一人でやってみてから、
  若い人に相談しよう」などです。
  もしここで行き詰まりを感じていたら
  「少し休憩。明日、再チャレンジしよう」
  「明日、若いやつに質問しよう」でも
  「次の行動計画ができた」ということです。

5 計画したことをやってみましょう。
   「4」に沿ってあなたが更にYouTubeを見続けたり、
  翌日若い人に質問したりしたら、
  あなたはもうコルブのサイクルの2巡目に入っています。
  そう考えると簡単 ですよね。
  最近はこの一連のプロセス全体を「リフレクション」
  というようになっているようです。

 お気づきだと思いますがこういう体験をすることで
「コルブの学習サイクル」を回すことは簡単に体験的に理解できます。
これを毎日回し続けることで自分自身が変化することを感じるはずです。
それは「パワポに音声を入れることができない自分から
できる自分へ変化していく」というコンテントの変化と、
「計画書をつくらなくてもチャレンジして変化していくことができる」
というプロセスの変化に対する気づきです。
コルブはこのサイクルを回すことを「学習」と言い、
回し続けることを「成長」と言っています。
オンライン授業の作り方に挑戦しながら
「学び方」を変えるきっかけにもしてほしいものです。
[この項終わり]

(※1)「人事評価はもういらない 成果主義人事の限界(松丘啓司著/ファーストプレス)」

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