次のオンライン連続講座のテーマ(3)

 まず指摘し続けた問題点は「イベントや研修会に積極的に来る人たちが現場から離れる傾向にある」ことです。私はこれを「具体と抽象の問題」だと感じます。現場にいると毎日「具体的な問題・具体的な現象」と格闘します。これを解決するのはとても大変なことです。個々の生徒の違いがあり、担任や保護者や同僚なども「個別の存在」なので問題は複雑です。他校の実践事例との共通点など全くないような気すらします。
 それに対してイベントや研修会では参加者が持っている「個別の問題」はほとんど俎上にあがりません。それをやると多くの参加者は「共通点を持てない」ので、ついていけなくなるからです。従って講師も「個別や具体」の話ではなく「抽象的」「一般的」な話をします。これは具体の枝葉がないのでとてもきれいに見えます、耳触りもよく聞こえます。
 この抽象的な話や理論的な話をもとに現場の具体的・個別の問題に適用できると研修会にでかけた効果はとても大きいことになります。しかし、それには「抽象を具体化する」だけの力が必要になります。抽象論を具体論に降ろす、或いは両者を自在に行き来する論理的能力が必要になります。併せて、話し方・聴き方・調べ方・現場の巻き込み方‥などのスキルも必要になります。その土台となる人間関係も大事です。その結果が「抽象的・理論的な話はきれいにまとまるけど、現場はめんどくさい」となりがちです。
 そうすると現場にいる(具体の世界にいる)より、抽象の世界にいる方が楽です。「自分の具体的事実」は棚上げして「抽象論を語り合うのは比較的簡単」です。何より、きれいにまとめることができます。参加する人たちが、現場よりイベント等の場が居心地よくなるのは当然のことです。
 たぶんこれが問題の本質です。そうであれば解決策は簡単です。イベント等で「具体を扱えばよい」のです。参加者の誰かの「具体的な事実・具体的な問題」をみんなで考え解決策が出せるか、解決策のヒントが得られるところまで進めばよいのです。これにより「具体的な問題を抱えた人」は得をします。うまくいけば、翌日、現場で新しい実践に取り組み始めることでしょう。
 では、それ以外の参加者はどうなるのか?その「他のメンバーの具体的な解決策」をそのまま使うことはできません。そこでこれを現場で役立たせるには、この「具体的な解決策」を抽象化する必要があります。抽象化の作業をきちんとやれば現場の具体に適用できます。これこそ「コルブの学習サイクル」です。
 オンライン講座では「他のメンバーの具体的な問題」をみんなで解決します。それが「具体的な体験Concrete experience」です。それを「振り返り」ます。この振り返りは二重の構造になります。1つは提示された「問題そのもの(コンテント)」について振り返ります。例えば「何が問題だったのか」「解決のカギは何だったのか」「今後の課題は何なのか」などです。2つはみんなで話し合っていった「問題解決の過程(プロセス)」の振り返りです。例えば「どの質問が有効だったか」「問題提示者にはどんな気づきが起きたのか」「グループの何が問題解決に効果的だったのか」などです。
 ここまではかなり「具体的な振り返り」です。これを更に抽象化する必要があります。この段階が「抽象的な概念化Abstract coceptualization」です。ここが自分の現場との橋渡しになります。この「抽象的な理解」があれば、現場の具体的な事実についての「能動的な試みactive experimentation」が実践できることになります。
 逆に言えば、このプロセスを講座全体のプログラムとして作っておかないと、「現場は現場、講座は講座」になってしまいます。そうすると「現場より講座が楽しい、現場より講座の方が簡単で美しい」となってしまうのです。その結果が「熱心に学ぶ人ほど現場から離れる」ことになるのです。

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 この構造をきちんと組み入れるためのアイデアが以下の構造です。
①事前の非同期学習
 ・基本的には「動画視聴」と「気づき等の書き込み&共有」です。
 ・その内容を2つに分けます。
   「理論的学習」と「問題提示」です。
   問題提示は問題提示者と小林のZoom対談にしようと思っています。
   時間は5分~15分。それをもとに理論的説明動画を作ります。
   ここは私の力量が大きく問われるはずです。
   ワクワクとドキドキです。
 
②オンラインの動機学習
 ・アクションラーニング・セッション(以下、ALセッション)か、
  クリティカルフレンドを用います。
 ・質問、振り返り、気づきを中心として提示された問題を全員で解決します。
 ・後半はそのプロセスを振り返ります。
③事後の非同期学習
 ・スプレッドシート上に書き込み、相互閲覧により共有します。
 ・問題提示者はこれをもとにレポート作成に挑戦します。
 ・レポートのブラッシュアップも「質問と気づき」中心にメンバー同士で行います。
  この方法は「課題研究」等の指導に役立ちます。
これでだいぶ、次のオンライン講座の骨組みが見えてきました。[この項続く]

※秋から継続しているオンライン連続講座の案内は以下です。
◎「みんなのオンライン職員室」はこちら→ https://minnano.online/
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