現代版組踊「肝高の阿麻和利」に感動!

【雑感】沖縄ではほとんど観光もせずに研修会と講師の連続ですが、キャリア教育や地域教育に関わる人たちが注目している標記の「現代版組踊(くみおどり)」を一緒に鑑賞しました。
  沖縄県うるま市に残る世界遺産=「勝連城(かつれんじょう)」は琉球王国首里(しゅり)の王様(=尚泰久王(しょうたいきゅうおう))によって統一される前の有力な豪族=阿麻和利(あまあり)が築城した名城です。この阿麻和利を主人公としたミュージカルのような大エンターテインメントです。約3時間の劇と歌と踊りに感動しました。すごいのはその出演者全員が地元の中学生と高校生ということです。10年以上続いています。全国的に注目されているとのことです。
   私は先週石垣島に飛ぶ飛行機の中の雑誌で「組踊(くみおどり)」の記事を読んでいました。これは琉球王朝が従属していた清からやってくる使節=冊封使(さくほうし)をもてなすために作った芸能です。初演は1719年、親交のあった日本本土の芸能を参考に琉球独自の芸能を加えて作られました。2010年11月にユネスコ無形文化遺産である「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に登録され、「国立劇場おきなわ」を中心に定期的に上演されています。
  その1719年の最初の演題の1つが「二童敵討(にどうてきうち)」です。これはいわゆる仇討ものです。父を殺された兄弟がその宿敵の王を殺害するというストーリーなのですが、その王が阿麻和利(あまあり)なのです。つまり正史では阿麻和利(あまあり)は琉球王国統一に最後まで抵抗して、残忍な行為をして、仇討で殺された最後の豪族として語られているのです。その話が「権力」によって「組踊」に取り込まれ、伝えられ、「国立劇場」で上演され続けています。
  現代版組踊「肝高の阿麻和利」はそのストーリーに対する見事なアンチテーゼなのです。この劇中にも「仇討」の場面が登場します。しかし、解釈は全く異なります。勝連城の地元の人たちにとっては、阿麻和利は悪人どころか貧しい村を救い豊かに国にしてくれたヒーローなのです。「肝高」とは「志が高い」という意味です。したがって「肝高の阿麻和利」とは「大志を抱いた大人物=阿麻和利」の意味です。そして出演者たちは劇中で「私たちの英雄=阿麻和利の志を受け継いで『新しい夢を開こう』」と繰り返し歌い上げます。
  「国立劇場」で上演し続けられている「組踊」のアンチテーゼが、「勝連城(かつれんじょう)」の地元で中高生と地元の大人たちの力で、権力に対抗するかのように、上演し続けられている。この構造自体にも胸のすく痛快感があります。楽しい1日でした。