感情の抑圧が反省を妨げ、親から子へと伝達される…

【授業研究】
「反省させると犯罪者になります(岡本茂樹著/新潮新書)」の著者=岡本茂樹氏は、私立中高で英語教師として勤務した後、現在は立命館大学教授として活躍されています。この本の主張をまとめると、次のようになります。

1 本当の「反省」とは被害者の立場に立つことができて、自分が犯した犯罪行為の意味が理解できること。そのためには、まずは、被害者に対するネガティブな感情をきちんと表出させる過程が必要である。その過程を経た後に、自分がやったことの意味が理解でき、「ひどいことをした」「二度とこんな事はしない」という気持ちになれるのです。

2 しかし、「反省文」を書かせると言うことは、最初から「ごめんなさい」と言わせること。自分のネガティブな感情を抑圧させるだけ。「形式的な反省」はその感情を抑圧させ続けるだけだから、いずれ爆発する。それが「犯罪者になる」ということです。

3 偶々、その人が生きている時には「犯罪者」にならなかったとしても、その「反省させる育て方」は子ども・孫へと受け継がれる。人は自分が育てられたような子どもを育てるからです。ということは、感情を抑圧し、ネガティブな感情を抱え込み、押さえ込むことで人生がねじ曲がる生き方が世代を超えて伝わっていく。いずれ、子孫の誰かが「犯罪者になる」可能性を伝えていく。

 私は著者の主張にほぼ賛成です。小中高校や大学で「生徒指導」を担当して、「反省文」を書かせている人には是非とも読んで欲しい本です。
 私がこれを「授業研究」として取り上げているのは、この構造が学校教育の問題と密接につながっていると感じるからです。それについては次回述べることにします。(この項続く)