管理職と授業改善

【授業研究】年度が替わってしばらくたつので、継続して指導に伺っている学校の先生たちから「今度の管理職はねぇ~」という話をしばしば聞きます。今年度に限らず、毎年のように聞いています。私も高校教諭の時には苦労しました。あれこれを思い出しながら、少し整理してみようと思います。

 1つは管理職の皆様へのお願いです。2つはご不満をお抱えの先生たちに、です。

 まずは管理職の皆様へ。現場の先生たちをがっかりさせたり、イライラさせる筆頭は「全てにやる気のなさそうに見える校長」です。「退職まで失敗をしないで過ごしたい」ということなのでしょう。中原淳先生流に言えば、「ゆでガエルの悲劇より、残されて死に向かうオタマジャクシ(=若い人たち)の悲劇の方が大きい」ということになります。http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/10472

 このタイプの校長先生には何をお願いしても仕方がないのでしょうね。でも、「オタマジャクシの悲劇」をつくらないために、私たちがやってきたことは後述します。

 他の「困った管理職」のタイプは「バリバリやる人」です。ただ、その方向が「外向きばかり」の場合です。対外的には公開授業や公開討論会などのイベントをバリバリやります。マスコミ対応も上手な人が多いので新聞やテレビに登場したりします。ただ、「授業改善」の質的向上にはあまり効果がなく、何より先生たちのイベント準備の負担が増加します。このタイプの校長先生がけん引した学校は、校長交代・校長退職とともに「何もやらない学校」になりがちです。ぜひ、「退職後も活動が続く学校経営」を意識して欲しいものです。

 もう一つ付け加えると「たぶん授業が下手だった校長先生」です。先生たちの授業に積極的に口出す姿勢は良いのですが、その内容が先生たちを混乱させるアドバイスをする人が多いということです。トンチンカンなアドバイスは現場を混乱させます。こういう校長先生は、やる気のある教員を集めてコアチームに具体的なリードは任せて、校長はスポンサーシップを発揮することをお勧めします。

 次はあれこれご不満な先生たちへのアドバイスです。2つあります。第1は「なるべく早く校長のやる気と能力を判断する」です。第2はその判断に基づき「無理をしない」です。

 第1のために私たち越ケ谷高校授業研究委員会がやっていたことを紹介します。校長の異動がわかり次第、留任する教頭に以下を依頼しました。4/2に校長に授業研究委員会の活動報告をする時間を設定して欲しいという内容です。4/1はとてつもなく忙しいのですが、4/2は比較的余裕があるからです。ここで報告し、新年度の予定を提案します。この1時間でおおむね校長の意欲と能力は把握できます。それに応じて対応を考えるということです。

 その際、大事にしていたのは第2の「無理をしない」でした。やる気のない「ゆでガエル」校長をやる気にさせることはほとんど不可能だと思っていました。それは教員の仕事ではないと思っていました(そのための仕事は給与の中には含まれていないということです)。文句や批判もエネルギーの浪費と思っていました。やる気のある校長の時にはドンドン進めますが、そうではないときは「それなりに」ということです。

 ただ最後が大事です。私たち教員の最大の強みは校長がどんな人であろうが、「毎日授業をする」ということです。授業改善に挑戦し続け、自分のスキルをブラッシュアップすることはできるということです。担任としての仕事や部活動顧問の仕事、保護者対応の仕事なども同様です。それを続けていれば、いずれ仲間が増える、理解ある校長が来る、などの変化が起きます。たぶんこれを続けることで「オタマジャクシの悲劇」も減るのではないかと思います。

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