「結果が出るのは3年後?」

【授業研究】研修会でいただいた質問への回答です。
〈質問〉「結果がでるのは3年後といわれますが教員は結果が待てずに方法を変更してしまう。先生はいつよいと気付きましたか?」
〈回答〉
この「結果が出るのは〇年後」という話はよく聞きます。私はそれが不思議です。私は、結果は「すぐに出さなくてはならない」と思っていますし、「すぐに出る」と思っています。
 なぜ「結果はすぐに出さなくてはならないか」と言えば、今教えている生徒のためです。「始めたばかりだから、今年の生徒では成果がでなくても仕方がない」と先生がとらえているとしたら、今目の前にいる生徒たちは単なる実験材料になってしまうのでしょうか?私はそんな無責任なことをやってはいけないと思っています。
 私がこの授業が良いと確信したのは最初の時間です。少し経過を述べる必要があります。私は教員になってからカウンセリング、コーチング、構成的グループ・エンカウンター、非構成的エンカウンターグループ、メンタリング、アクションラーニングなどを学び、協同学習、『学びあい』、学びの共同体などの色々な手法についても調べてきました。また、キャリア教育をテーマとした「総合的な学習の時間」のプログラム開発も続けてきて成果を上げてきていました。更に、物理の授業では伝統的な授業形式ではあったものの、3校の勤務先で大学進学実績を飛躍的に向上させ、物理選択者数を倍増させてきました。
 つまり、授業で成績を上げるためのノウハウと実績はかなりの程度に持っていたといってよいと思っています。その上で、この授業を始めましたから、最初の1時間目から「これはうまく行く」と確信しました。その理由は(1)誰も寝ない、(2)大半の生徒が一生懸命に話し合っている、(3)リフレクションカードの大半は好評だった、の3点でした。もちろん、不具合はありました。それは(1)説明時間が予定より長くなったこと、(2)問題数が不足した感じがしたこと、(3)一部の生徒はほとんど話し合いができなかったこと、などでした。
しかし、これらの不具合は、すぐに次の時間から調整ができることでした。つまり「説明→問題演習→振り返り」の大枠は変えることなく継続しましたが、説明時間を予定通りに収めるための練習、問題の選び方と並べ方の試行錯誤、話し合いができない生徒に対する働きかけ方の創意工夫などは次々に取り組んでいったということです。
 更に何より大きかったのは「リフレクションカード」でした。これによって毎回、生徒たちの気づきを読み取ることができました。それが私にとっては毎回の微調整のヒントでした。前回のリフレクションカードで生徒が不満を持ったことを修正した授業をやれば、生徒たちは「満足した」と書いてくることはしばしば起きました。これらは、ますます私を「この授業はうまく行く」と確信することになってきました。
 要は毎時間の生徒たちの様子を丁寧に観察し、確認テストの内容とリフレクションカードの内容をもとに生徒たちの学びの中身を確認していけば、「今日の授業で何が起きていたか」はすぐに把握できるということです。Plan→Do→Check(See)→Actionのサイクルは半年、1年かけて回すものではなく毎回の授業ごとに回すものです。もっと言えば、授業中に回すものです。このような考え方をリアルタイム・リフレクションというようですが、このように取り組んでいけば、少々の不具合や予定通りに進まないことは授業中にしばしば起きますが、次の時間にはおおむね改善できます。この取り組みを年間30〜150回も同じクラスで行えるのが私たち実践的授業者の強みです。
 こうした取り組みが「毎年成功して」、「毎年向上していく」ことになるのだと思っています。ぜひ、「今、目の前にいる生徒たちを大切に」していただきたいと思います。