久々に逐語記録分析をしてみました

【授業研究】昨日の投稿にFB上でSさんからいただいたコメントをもとに考えました。

 大学授業中に前日の成人式で疲れている学生が、「先生、成人式の翌日から授業開始ってひどくないですか?」と質問したのに対して、私は‥

「あ、そうか。昨日はきっと朝から1日忙しかったんだね」と返しました。

 この部分についてSさんは次のようにコメントしてくれました。

「やはり、よし、悪しは別にして、

 『そうか、昨日は成人式で1日忙しかったんだね』

 といったん受容的な言葉がけが出来る小林先生素敵です。

 カウンセリングマインドを忘れてしまうと、

 『言い訳するな!』『前から分かっていたことだろう!』

 『若いんだから頑張れ』と言ってしまいがちです」

 これに対して、私は、別にカウンセリングマインドや受容を意識しているわけではなく、事実に目を向けているだけ、と返事しました。すると、更にSさんは

「事実のフィードバックがなかなか難しいようです。先に感情がきてしまい、多くの方は説教に走るようです」とコメントしてくれました。

 改めて学生のコメントを見ると「(こんな日に授業をやる大学のやり方は)ひどくないですか?」と言っています。ここに焦点を当てると「大学批判」です。そう理解すると、これに対して「即座に防衛する」か、「防衛するために攻撃する」ことになるのだろうと思います。そうなると学生は先生や大学に不信を持ったり、対立感情が残りかねません。

 実はもう一つの視点もあります。この学生は「そんなにひどい条件だけど、『私は授業に参加している。ほめてください』と言いたい」のかもしれません。ここに先生が過剰に反応すると、「偉いですね。来ていない人に比べるとあなたは素晴らしい」と褒めることにもなりそうです。これは「褒められ競争」を招きます。「ほめられるために出席する」ことを繰り返すと、「主体的な学び」を損ないます。

 では、どれが正しい対応か?「これだけの会話では〈わからない〉」というのが穏当な判断だと私は思います。だから、「判断・評価・指導・防衛・攻撃」などは棚上げします。そのための「事実のフィードバック」です。

 実際の学生との会話は以下のように続いて終わっています。

「先生、昨日、成人式でした」

「あ、そうだよね。おめでとう」

「ありがとうございます。でも‥」

「でも?」

「先生、成人式の翌日から授業開始ってひどくないですか?」

「あ、そうか。昨日はきっと朝から1日忙しかったんだね」

「はい‥くたくた‥なんです」

 つまり、学生は「私はくたくた」ということを「わかって欲しい」のです。それを言うことができて、聴いてもらえて、それが達成されたので、満足したのだと思います。もし大学批判が強いなら、その後も食い下がると思います。それがなかったところを見ると、この発言は単なる「言葉の綾」なのだと思います。

 もし、ここで私が学生を批判すれば、それに対して防衛的になった学生は更に大学批判や教員の私に対する反論を始めるかもしれません。

 「目の前の人を大切にする」‥カウンセリング訓練課程で繰り返し言われ続けてきたことです。科学者としての視点も加味した私の意識は、「相手の発言を、冷静に受け止め、事実の確認をすることから始める」です。

 久しぶりに、カウンセリング訓練でやっていた逐語記録の分析をした気分です。Sさん、きっかけをありがとうございます。

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       2018/1/14(日)  13:30~16:30  東京・恵比寿

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「成人式の翌日は休みにして‥」

【授業研究】大学授業が始まりました。2年生が多い100名以上が受講している授業では、いつもより少し出席者が少ない感じ。問題演習の途中で、学生に声をかけていくと眠そうな学生も多い‥。「正月休みぼけかな?」と思っていると‥。

「先生、昨日、成人式でした」

「あ、そうだよね。おめでとう」

「ありがとうございます。でも‥」

「でも?」

「先生、成人式の翌日から授業開始ってひどくないですか?」

「あ、そうか。昨日はきっと朝から1日忙しかったんだね」

「はい‥くたくた‥なんです」

 こうやってやりとりしている学生たちは近隣に住んでいる学生たちです。地方に住んでいる学生たちの成人式は、土曜日や日曜日が多いと聞いてはいますが、月曜日に成人式が行われた地域もありそうです。それだと、火曜日の授業は出席できないかも‥。

 大学側の立場に立てば、休講日を増やすと定期試験や入試日程が確保できないのだと思います。なかなか、難しいところです。

 まあ、とにかく成人式を迎えた学生の皆さん、おめでとうございます。

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今年はより実際的に‥

【授業研究】年末年始はあまり出かけない予定でしたが、それでも何人かの人と会う機会がありました。更にはメールやメッセージでいただいた情報もたくさんありました。

 その結果、私の活動範囲はかなり広がりそうです。基本的には「高校物理」の授業についてのみ、研究しているつもりでした。しかし、その方法が他教科にも役立つという声を聞き、少しずつ他教科にも自分の考えを敷衍し続けていました。

 その結果、最近は小中高校、専門学校等の具体的な授業改善に関わるお仕事をいただくことになってきました。更には、特別支援教育にも。色々なことが共通しています。

・仕事量を減らす授業改善でないと長続きしない。

・組織的な取組みがないと学校全体の改善は進まない。

・組織的な取組みの方法は「振り返り会」の方法などがそのまま役立つ。

・授業改善の「考え方」「基本構造」「スキル」は大半が共通している。

・機械(ICT機器)、道具、教材共有化などが必須であること。

 大半は高校教諭時代に開発してきたことですが、この2~3年間に現場で学んで開発してきたこともだいぶ増えてきました。校種・教科を超えて、組織・スキル・道具開発などの様々な視点を取り入れながら、新しい研究を続けていきたいと思います。

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仕事始めの研修会

【授業研究】1/5(金)に自修館中等学校の校内研修会に伺いました。先生たちは仕事初めの日に、研修会がびっしりのようでした。その中で、2時間半をとっていただきました。

 「私たちはまだほとんど実践できていないんです。他の学校は進んでいるのでしょうね」と何人かの方に問われました。私は「そんなことはないと思いますよ」と答え続けていました。諮問で「アクティブ(・)ラーニング」という言葉が出てから動き出したのは大半が個人的な運動になっている気がします。定義も曖昧で、様々な手法が出現しただけのような気がします。

 一方、それなりに定義を統一させ、組織的に取り組むには、「主体的・対話的で深い学び」という表現から進む方がわかりやすいと思っています。もうすぐ、高校の学習指導要領が出ることもあって、私は「これからが本番」だと思っています。

 この学校に限らず、どの学校も「もう出遅れた」と焦る必要はないと思っています。どの学校で、あわてず、着実に動き出してほしいものです。

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特別支援教育について考えました

【授業研究】facebookで知り合って、直接お会いすることができたA先生から、色々なことを伺いました。特に特別支援の授業で多くの先生たちがとても困っているということと、A先生がそれを乗り越えるための実践的な研究を進めてきていることでした。

 せっかくの研究成果なのに、発表するのには困難を極めているようです。出版もなかなかできないというお話を聞いて、残念な気がしました。出版業界の困難さも、あちこちから聞いてはいるものの、多くの先生たちに役立ちそうなことが、情報提供の場も持てないのに疑問を感じます。

 このA先生の研究には、大きな可能性を感じました。普通教室にも使えそうなツールと考え方がたくさんあります。これから、私が関わる小中高校の授業改善に利用して、その成果を発信していこうと思います。

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質の高い講演会が起きた背景は?

【授業研究】昨年(2017年)11月18日(土)に福岡県で研修会講師を務めました。その時の私の講義と質疑応答の速記録を編集して、講演記録を作る作業の大詰めです。最近の私はパワーポイントを使ってスライドを見せながら話すので、話した言葉だけを文字起こししても意味が通じません。文字起こした原稿にスライドを挿入して編集することにしています。担当の方や印刷序の人たちには手間を増やしてしまうのですが、私はそこに出席していなかった人が読むことを考えると、どうしても妥協できないのです。

 手伝ってくれる秘書のYさんの手間もかかります。逆に言えば、色々な人の協力を得て、講義録を作っています。そんな作業中に、Yさんが「この講演録はとても良いですね」と言い出しました。「知人にも見てもらったのですが、『講義の内容も、質疑応答の内容もとても分かりやすい』と言っていました」とのこと。

 そういわれてみると、これまでいくつか作ってきた講演録よりも密度の高い内容になっている気がします。特に質疑応答の部分です。Yさんも「質問がコンパクトだし、良い点を突いている鋭い質問ですよね。この質疑応答は会場の人たちにも、多くの学びになったのような気がしますね」と言います。‥、なぜだろう?と気になってきます。

 この時は、約250人相手に90分間という条件でした。はっきり言って「悪条件」でした。ワンウェイに近い講義形式は私が「苦手」ということもありますし、「アクティブラーニングをテーマにワンウェイで語る」ことへの抵抗もあります。

 そこで、これまでにない形式にチャレンジしました。「私の説明10~15分、グループでの共有と質問を考える時間2分、質疑応答8分」を3セット繰り返す形式にしました。スタートでは「進め方の説明とグループ作り」、最後には「まとめの講義」を少し入れて、90分間でピタリと終わりにしました。質問は延べ8人から、延べ9個をいただきました。24分間で9個の質疑応答ですから、1問当たり24分÷9=2.7分/問、です。この密度は私がコンパクトに回答するだけでは達成できません。質問が実にコンパクトに行われ、その上、質問の焦点が明確な内容だった成果です。

 この「説明10~15分、質問を考える2分」は校内研修会でもしばしば使いますが、「質疑応答」に8分という時間制限をしたのは初めてでした。これが効いたのではないかと感じています。実際、普段なら「質問ください」と言ってから手が上がるまでに20~30秒間かかります。しかし、この時は、その合間の時間は全くありませんでした。これも時間効率が高かった理由のひとつです。

 要するに、私のしかけが良かった部分とともに、それによって参加者の皆さんの「質問の質」が高くなったということが大きな理由です。それによって、「質の高い対話」ができたと感じています。参加者の皆さんの協力のおかげで、私はとても質の高いワークショップを経験させてもらえたということです。参加の皆さんに、改めてお礼申し上げます。

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私が言いたいこと‥

【授業研究】「書く」ことは「考える」ことです。書き続けると頭が整理されます。考えが深まります。

 「アクティブラーニング入門(1)」では、私が授業改善に取り組んできた概要をさらりと書きました。「入門2」では「新しい授業」を支えるスキルについて書きました。

 現在、執筆中の「入門3」は組織的に取り組む方法を具体的に展開しています。できることなら急いで出したいと思っている「入門4」は管理職・リーダーに向けて書きます。「入門3」を書く合間に「入門4」の「(仮)まえがき」と「(仮)目次」を書いてみました。その作業中に閃いたことがありました。

 それは、全体を通して私が言いたいことは、生徒同士、生徒と先生、先生同士、管理職と先生(教諭など)‥そのいずれもが、「安全安心の場」を形成し、対等な立場での「対話的な学び」がいつでもどこでも起きている‥そんな場を作りたいというのが私の望みだということです。そういう場を形成すれば、おのずから「主体的な学び」を続ける個人が育ちます。生徒の中にも先生たちの中にも‥です。

 その対話は「質問から」始まります。安全安心の場が維持されて、お互いの質問のスキルが向上すれば、「深い学び」を引き起こす質問が連鎖しています。こんな理想的な学校を私は描いています。

 この考え方のメリットは、教科科目の授業スキルも、クラス・学年経営のスキルも、生徒指導・キャリア教育等のスキルも、全ての教育活動が同じ人間観の上に乗り、共通するスキルを使うことにあります。理解しやすく、スキルもマスターしやすく、生徒が身に付けたスキルは社会に出てからもそのまま役立つスキルになります。

 数日間、書き続けた成果です。良い本を書けそうな気がしてきました。

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